分身を抹殺する方法
久しぶりに本気で怖いホラーを読んでいる。かなり特殊な設定で、この著者でないと絶対に書けないと思う内容。
2022年 読書#16
『ダーク・ハーフ』上巻 スティーブン・キング著という小説。この物語が始まる前の本の扉に、著者のメッセージがある。『故リチャード・バックの助力とインスピレーションがなかったら、この小説は書けなかっただろう」というもの。
これは彼流のお遊び。リチャード・バックというのはスティーブン・キングの別名。この名前で彼はいくつか小説を発表している。偽のプロフィールを作り、結果としてリチャードは死んだことになっているwww
そんなお遊びをヒントにして、彼は恐ろしい小説に昇華させた。主人公はサド・ボーモントという純文学の作家。デビュー作は賞を取ったものの、その後の作品はまったく鳴かず飛ばず。
もう一人の作家が登場する。ジョージ・スタークというホラー小説の人気作家。実はこのサドとジョージは同じ人物だった。純文学でデビューしたサドは、ペンネームを使うことでまったく方向性のちがう小説を書いた。もちろんエージェントは知っている。
その小説が次々にベストセラーとなり、サドには大金が手に入った。だけどジョージとして小説を書いているときのサドは、何かに取り憑かれたような気分になり、精神的にダメージが大きい。この一人二役がバレそうになったことで、サドとエージェントはあることを計画する。
すべてを世間に公表した。ジョージの正体はサドだと。そしてその決意を象徴するかのように、ジョージが死んだという嘘の設定を作りあげ、冗談で葬式や埋葬までやった。それを取材したいという雑誌があったから。笑い話で済む出来事に過ぎなかった。
ところがその後に続けて事件が起きる。ジョージの埋葬という茶番に関わった人間が次々に惨殺される。最終的には雑誌のカメラマンや、サドのエージェントまで命を奪われる。事件現場には指紋が残されていた。それはサドの指紋だった。
ところがサドには完璧なアリバイがある。警察もその事実を認めるしかなかった。やがて犯人からサドにも脅迫電話が入る。その声紋を分析すると、やはりサドと同一人物だという結果が出た。事件現場に残された犯人の血液型とも一致する。だけどサドには完璧なアリバイがある。
実は物語の初めに、ある事実が明かされている。サドは双子で生まれるはずだった。だけど胎内にいるあいだにもう一人の子供はサドに吸収されていた。少年時代に強烈な頭の痛みを覚えたサドは、緊急手術を受ける。頭を開いたらそこにあったのは脳腫瘍ではなく、もう一人の子供の肉体の一部だった。
サドは自分のイメージの存在だったジョージが物質化したことを確信している。だけど警察は納得してくれない。そりゃそうだろう。そうしているあいだにも、次々と関係者が殺されていく。残ったのはサド、妻のリズ、そして双子の幼い子供たちだった。上巻はここまで。
いまのところ犯人の正体は明確に明かされていない。だけど指紋も血液がも声紋も同じだということは、サドの分身であると考えるしかない。さらに子供時代における脳の手術も気になるところ。さて下巻では犯人についてどのように描かれるのだろう? そしてサドの分身を抹殺する方法は?
久しぶりにドキドキしながら、下巻を手にする日を楽しみにしている。ちょっと怖いけれど。
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