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高羽そらさんインタビュー

日本人の心に潜む排他性

ロシアによるウクライナ侵攻を見ていると、陸続きで他国から攻められる恐怖を実感する。島国で暮らしているいまの日本人には経験がないこと。戦国時代の日本人ならその恐怖は理解できるだろうけれど。

 

そのせいか、移民や難民に対する日本の壁は世界に比べて厚い。大量の難民が流れ込んでくるという経験がないので、どうしても人ごとになりやすい。近年のヨーロッパでは移民に対する抵抗感が強くなっている。日本人にそうした排他性が存在しないのではなく、差し迫った状況に直面していないだけだろう。

 

例えば台湾や朝鮮半島で有事があれば、海を越えて大勢の難民が日本へ押し寄せる。そんな事態に直面したら、それまで隠されていた日本人の排他性が顕著になるかもしれない。なぜならいまのような何もない日本でさえ、そんな兆しを感じる出来事を見聞きするから。

 

それは外国人技能実習生に対する企業の対応。安い賃金で労働力を確保できることに飛びついて、彼らに過剰な労働を強いているという報道を見かけることがある。表向きは国際交流の一環として実施されている制度なのに、どこかでねじれが起きているような印象を受ける。

 

そんな問題をテーマにした小説を読んだ。

 

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2022年 読書#31 

『血の記憶』浅野涼 著という小説。ミステリー作品で、殺人事件の真犯人を追求していく物語。

 

最初に起きるのは浜松のスーパーでの拉致監禁事件。ある大企業の社長の娘と孫を、外国人の男性が拉致した。二人の警備員と共に警備員室に閉じ込めた。犯人の要求は社長と娘の夫の左手首を切断するというもの。犯人の左手は切断された義手だった。そうすれば親子と警備員を解放するとのこと。

 

これから読む人もいるだろうから、事件の真相に触れるのはやめておこう。拉致された警備員である金山という高齢の男性は、この事件に関係している。彼はその企業の元社員で、ひどい扱いを受けていた外国人労働者を助けていた人物だった。

 

この企業は社長のワンマン経営で、賃金の安い外国人労働者をこき使っていた。実際に小説を読み進めると、あまりにひどい対応に怒りが収まらない。金山がこの会社を退職したのは、こうした外国人をかばってきたのが原因。

 

物語の途中で、タレントのSUMIREという女性が関わってくる。彼女は幼いころに乳児院に捨てられた。そのとき1枚の写真が残されていた。父親だと思われる外国人の男性と工場の写真。それは事件に関係している企業の工場だった。そして父親と一緒に写っているのは人質になっている金山だった。

 

自分の父親のことを知りたいために、SUMIREは人質事件に関与してくる。そこで犯人は急に要求を変えた。もしSUMIREが人質になるのなら、親子を解放するとのこと。ということでSUMIREは人質の身代わりとしてスーパーの警備員室に監禁される。

 

結果としてこのSUMIREの活躍によって事件の全貌が明らかになる。それは彼女の父の殺害事件の真相を明らかにすることでもあった。なかなかよくできた設定で、最後までドキドキして読み進めることができた。

 

小説では、この大企業の社長による外国人労働者への差別的対応が糾弾されている。だけどこの排他性は、日本人の心、もっと広い意味で言えば人間の心に潜んでいるものだと思う。犯人に対する怒りを覚えつつ、自分が所属しないコミュニティを排除しようする人類共通の闇を訴えてくる作品だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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