ボクの母ならどうするかな?
今日は神戸市の小学校が入学式だった。買い物に行く途中、近くの小学校の正門前で大勢の家族と新入生が写真撮影をしていた。そんな光景を見ながら、ついボクの母のことを思い返していた。
母とは小学校1年生の夏に生き別れとなった。だから小学校の入学式には母が参加してくれた。なんとなくだけれど、その雰囲気だけは記憶がある。でもその夏以降の母との生活がどのようなものだったかは、想像することさえできない。そもそも母がどんな性格で、ボクとの相性もわからないから。
世の中には愛情に満ちた母親もいれば、毒親と呼ばれているような人もいる。普通の家庭なら、それらが混ざり合ったような状態なんだろう。ただ子供がとんでもない窮地に陥ったとき、その親の本音がわかるような気がする。もしこんな状況になったら、ボクの母はどうしただろう? そんなことを考えてしまう映画を観た。
2022年 映画#51
『ベン・イズ・バック』(原題:Ben Is Back)という2018年のアメリカ映画。ジュリア・ロバーツが主演していて、彼女のキャリアベストではないかという賞賛を集めたらしい。ボクもそう感じた。彼女なしではこの映画は成立しなかったと思う。なのにアカデミー賞にノミネートされなかったなんて信じれらない。
クリスマスイブから、クリスマスの早朝に起きた出来事が描かれている。ジュリア・ロバーツ演じるホリーには4人の子供がいた。最初の結婚のときにできた長男のベン、長女のアイヴィー。そして再婚した黒人男性とのあいだにも二人の幼い兄妹がいた。
長男のベンは、怪我をしたときの鎮痛剤の投与が原因で、薬物依存症になってしまう。薬の欲望から抜け出すことができず、施設に収容されていた。そんなベンがクリスマスイブに施設を抜け出して自宅へ戻ってきた。
再婚相手のニールはすぐにベンを施設に戻すようにホリーに言い、ベンの妹も突然の兄の帰宅に怯えを見せる。なぜなら過去に相当のトラブルを起こしたらしく、最悪なことにベンの友人だった同級生の女性を薬物中毒で死なせている。その原因を作ったのはベンだった。
だけどホリーだけは彼を笑顔で迎えた。そして明日のクリスマスまでという限定で、彼を自宅に迎えることにした。ベンは77日も薬を断つことを継続中で、絶対に目を離さないという条件付きで一緒にクリスマスを過ごすことになった。
ところが元売人だったベン。彼の姿を見かけた麻薬ディーラーのボスに見つかってしまう。そして家族が教会に行っている留守中に自宅を荒らされ、家族が大事にしている犬が奪われてしまった。ベンは責任を感じ、必死になって犬を探そうとする。もちろんホリーは同行した。
ベンを恨んでいる人間は多い。中毒死した娘の父親もそう。ベンとホリーは、犬を連れ去った人物を一緒になって調べていく。やがて麻薬ディーラーの元ボスだということがわかった。その段階で危険を察知したベンは、母のホリーを巻いて単独で交渉に向かう。
ホリーは必死になって息子を探すけれど居場所はわからない。結論から言えば、ベンは最後の仕事として麻薬の運び屋を請け負う。そして無事に犬を返してもらうけれど、ベン自分の人生に嫌気がさした。褒美代わりに元ボスからもらった麻薬を摂取することで、自殺しようとする。
もしかしたら、最初から死ぬつもりで家族に会いに戻ったのかもしれない。だけどホリーは最後まで諦めなかった。最終的に心肺停止状態だったベンを蘇生させたところで映画が終わる。ベンが自宅に戻ってきた、という意味の映画タイトルだと思った。でも本当はこのラストシーンを象徴したものだった。
まさに『ベン・イズ・バック』というラスト。このベンを演じたルーカス・ヘッジスという俳優さんも良かったけれど、最初に書いたようにジュリア・ロバーツの演技は最高で凄まじい。優しいだけの母親じゃない。ベンを中毒にしてしまった医師をショッピングモールで見つけたとき、認知症の彼に対して「苦しんで死ねばいいのよ!」と吐き捨てている。
とにかく息子のことを絶対に諦めない。明け方まで息子を探し回るホリーの姿に、感動を覚えずにはいられなかった。これこそが無償の愛だと思う。もしボクがこんな状況になったら、母はどうしただろう? ついそんなことを考えてしまうほど、心が震える素晴らしい作品だった。
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