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高羽そらさんインタビュー

記憶は世界を彩る絵の具

原作が存在する映画を観たあと、その世界をより詳しく知るために原作小説を読むことが多い。たいていは原作のほうが詳細に描かれているので、映画の世界を深く理解することにつながる。

 

ところが同じ過程で原作を読んだのに、映画よりも深い迷宮に入り込んだように感じる小説を読んだ。

 

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2022年 読書#40

『ザ・ギバー 記憶を伝える者』ロイス・ローリー著という小説。この物語を知ったのは、『ザ・ギバー 記憶を注ぐ者』という映画を観たから。かなり特殊な世界観なので、どうしても原作を読みたくなった。

 

映画では戦争のあと平和な世界を維持するため、閉鎖された世界で暮らすコミュニティが舞台となっていた。科学はかなり進化していて、すべてはコンピュータによって管理されている。12歳になると将来の職業が決められ、主人公のジョーナスが同じ世代の友人たちと職業決定の式典に出るシーンで映画は始まる。

 

この世界に普通の家族は存在しない。子供は出産を職業と指定された女性が人工授精で産む。そして父と母になる人物の元へ子供が届けられる。子供は男女一人ずつ限定で、もちろんこの家族には血縁はない。子供が成人すると、父と母の役割を終えた人たちは特定の施設で暮らすことになるという世界。

 

争いも、犯罪もない。何か不当な言動をすれば、すぐに近くのスピーカーから指導が入る。そして最大の特徴が、この世界の住人からは人間の過去の記憶がすべて消去されているということ。そしてたったひとりの人間が人類の記憶を保持していて、同じく選ばれた一人に伝えていく。

 

その新しい記憶の保持者として選ばれたのがジョーナスだった。そしてギバーと呼ばれる記憶を注ぐ者から人類の記憶を引き継いでいく。もちろん楽しいだけの記憶ではなく、戦争や犯罪という苦痛を伴う記憶もある。映画ではそのギバーをジェフ・ブリッジスが演じていた。

 

ジョーナスが最初に与えられた記憶が衝撃的だった。これは映画でも原作もで同じ。

 

その記憶とは『色』だった。つまりこの時点で映画や原作を読んでいる人は、この世界で暮らす人たちがモノクロ世界に住んでいることがわかる。人種差別を起こさないよう、色に関する記憶が消去されていた。だから世界の美しさを誰も知らない。

 

ジョーナスが初めて受けた記憶が『赤色』だった。その時点で彼が好意を持っているフィオーナという同級生の女性が、美しい赤毛だということを知った。原作では主人公が次々と色を思い出していく過程が美しく描かれている。

 

例えとして変だけれど、ボクの世代なら少しはその感動がわかるかも。白黒テレビしかなかった時代を知っているので、テレビがカラーになったときの感動を覚えている。この感動がヴァーチャルリアリティとなったようなものだから、ジョーナスの驚きは想像を絶するものだろう。

 

ただ最初に書いたように、原作は作品の世界観については理解できても、物語性としてはやや欠けるものを感じた。おそらく児童文学として書かれ、寓話性が強調されているせいだろうと思う。先ほどのフィオーナは、映画では記憶の秘密を知って大活躍した。でも原作ではただの友人でしかない。

 

同じく主人公の親友であるアッシャーも、映画では兵士としてジョーナスと敵対する立場になるのに、原作では存在感がない。映画化するにあたって、この二人の役割が大幅に追加されている。なぜなら原作のまま映画化すれば、作品として観客が納得できるものにならないからだろう。

 

原作ではジョーナスの結末が描かれていない。そしてその後、コミュニティがどうなったのかも不明。皆さんで想像してください、という終わり方だった。小説としてはそれでいいだろうけれどね。映画のほうが原作より詳細に描かれているなんて、なかなか珍しい経験だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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