SFの重要な前提が崩れるかも
SF小説やSF映画の重要な前提として、宇宙船内の冬眠というものがある。ワームホールでも使用しない限り、光速を超えて移動することはできない。だから目的地に着くまでは冬眠することになる。
映画で印象に残っているのは『エイリアン』の冒頭シーン。小説だと最近ベストセラーになった『三体』でも冬眠が頻繁に使われていた。長い場合だと数十年も冬眠していたという設定もあった。
人間を冷凍保存する研究は実際に進められている。不治の病の治療法が見つかるまで、冷凍して未来で治療を受けというもの。ちょっと調べてみたけれど、まだまだ技術的には問題があるように思える。冷凍すると水分が膨張して細胞膜が破壊される。解決方法としては体内の水分を不凍液に置き換えるというもの。
それだけに宇宙旅行の場合、冷凍ではなく体温を下げることで冬眠させるというのは理想だろう。ところが現実問題として、人間の冬眠は難しいというのが専門家の見解らしい。
人間は長期間の宇宙旅行で「冬眠」することはできないかもしれない、その理由とは?
リンク先の記事によると、リスやコウモリのような小型動物は、冬眠中に覚醒して保存しておいた餌を食べることで脂肪を補給しているそう。これは宇宙旅行には採用しづらい。理想的な冬眠方法は、クマのように途中で目覚めずに眠り続けることだろう。
ところが専門家によると、これは身体の大きなクマだから可能となる冬眠法らしい。記事から抜粋してみる。
『クマのような大きな動物が冬眠する場合、体温が下がり、代謝が低下し、心拍数や呼吸が遅くなり、常に脂肪を消費します。このため、無駄な狩猟や採食をする必要がなくなり、エネルギー消費量を98%も減少させるとのこと。それでも冬眠状態でもあらかじめ蓄えたエネルギーを消費し続けるので、冬眠が終わる頃には体重の4分の1が失われることもあるそうです』
エネルギー消費を98%も抑えているのに、体重の4分の1が失われるほどエネルギーを消費するなんて。冷凍とちがって、冬眠というのは思っているよりもエネルギーを消費するらしい。当然ながら人間の場合にはどうなるかが研究されている。
人間の場合、限界までエネルギー消費を抑えたとしても、1年間で2kgほど体重が減るとのこと。それくらいの移動時間の宇宙旅行なら問題ない。だけど映画や小説にあるように何十年も冬眠して宇宙旅行をするとしたら?
なんと肥満の限界まで体脂肪をつける必要があるそう。旅行年数によっては数百キロの脂肪が必要となるので、到着まで冬眠するというのは現実的に難しいというのが専門家の見解。人間の代謝に関するなんらかの革命的な対処法が見つからない限り、SF作品のように冬眠して宇宙旅行をするのは困難だということになる。
これはキツい。SF作品のコアなファンは、かなりディテールにこだわる。この点に引っかかってしまえば、作品の前提として冬眠が使えなくなってしまう。ボクもこの事実を知ってしまったから、安易に冬眠を作品に使えないよなぁwww
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。