同意なき交換殺人
ミステリー作品でよく使われる交換殺人。警察の殺人捜査は被害者の知人から始まり、加害者の動機が重視される。交換殺人は加害者の動機を見えなくするための方法で、加害者と被害者をスワップするもの。
誰かを殺したい人間が二人いた場合、殺す相手を交換することで警察の捜査が身辺に及ばないようにする。以前に警察関係の人が書いた経験談を読んだことがあるけれど、物語では成立しても、現実世界では難しいとのこと。まぁ、成功していたら交換殺人だとバレていないんだけれどね。
とても古い作品でそんな交換殺人を扱っている作品を観た。どのように殺人が交換されるのかと思って観てたら、なんと想定外の展開になった。
2022年 映画#66
『見知らぬ乗客』(原題:Strangers on a Train)という1951年のアメリカ映画。監督がアルフレッド・ヒッチコックということでチョイスした作品。最初に書いたように想定外の展開になって、最後までドキドキしながら画面に釘付けになった。
主人公はテニス選手のガイ。浮気を繰り返す妻から1年前に離婚を言われ、ようやく弁護士を通して離婚が成立しようとしていた。ガイにはすでに恋人のアンがいて、彼女と再婚する予定だった。
妻との離婚話に決着をつけつため、試合の日程の合間に妻が暮らす街へ列車で向かっていた。その車中でブルーノという馴れ馴れしい男と話す。偶然の出会いだったけれど、ブルーノは有名人のガイを知っていた。すでに大きな大会で準優勝している実力者だったから。
ブルーノはどうしても父親を殺したい。そこでガイに交換殺人を持ちかけた。ガイは相手にせず、適当にあしらって列車を降りた。ところが妻と会ったとき、本気で殺意を抱いてしまう。妻は別の男の子供を妊娠していた。だけど有名人になった夫との離婚が惜しくなった。
そこでお腹の子供をガイの子供だと世間に言い張り、離婚できないようにしてやると脅してきた。ガイは困り果てたけれど、本気で殺そうとは思っていない。ところがブルーノがいきなりガイの前に現れる。そして約束どおりにガイの妻を殺したという。その直後、夫の犯行を疑った警察も接触してくる。
ブルーノは約束どおりに父を殺せとガイに迫る。もちろんガイにそんな気はない。だけど事実を話せば、殺人の共犯にされてしまう。ということで事情を恋人のアンに打ち明けたガイは、二人で協力することでブルーノに対処するという物語。
とにかくブルーノ役の俳優さんがすごい。笑顔を浮かべつつ、サイコパスの雰囲気が全身から出ている。ストーカーのようにガイにつきまとい、父を殺すように何度も言い寄ってくる。それでも行動しないガイにキレたブルーノは、彼を妻の殺人の容姿者とするため、殺人現場に証拠を残そうとする。
結末はガイの疑惑は晴れ、ブルーノは死んでしまう。でもそこに至るまで紆余曲折があったので、最後まで本当に楽しく観られた。少し調べてみると、DVDにはちがう結末が収録されているらしい。ヒッチコックは別ヴァージョンを撮影していたんだね。気になるなぁ。
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