憑依の恐怖とどんでん返し
壮大な世界を描いた古典SFシリーズの全貌がようやく見えた。本当によくできた物語で、SFファンがこの作品について熱く語るのがわかる。ボクもそんな気分だから。
設定を少し変えてドラマ化された作品を観たことで、『ファウンデーション』というシリーズを知った。関連書籍を含めて14作品あるうち、今回で前半の結末を迎えた。残るは5作品という段階までようやくやってきた。
2022年 読書#70
『第二ファウンデーション』アイザック・アシモフ著という小説。1953年に出版されたこの作品をもって、著者はとりあえず筆を置いている。この物語の続編が出版されるのは1982年なので、30年近くも間隔が開くことになる。たしかにこの作品では本当の意味で完結していないから。
1000年という期間について語られた物語なので、簡単に説明するのは難しい。できるだけ短い説明に挑戦してみよう。
全銀河を支配しているトランター帝国というものがあった。ところが衰退を迎えていて、近いうちに滅亡すると唱えた人物がいた。ハリ・セルダンという数学者で、彼は心理歴史学を創設した。緻密な数学的計算によって未来を予見するというもの。
いまのままだと、帝国が滅んでから何万年も人類は争いが続くカオス状態の歴史を経験することになる。そこで心理歴史学に基づいて、その期間を1000年に短縮するため、セルダンは二つのファウンデーションを創設した。それぞれの世界に密命を託して。
第一ファウンデーションはターミナスという辺境の惑星に置かれた。そのターミナスはセルダンプランの通りに、いくつもの苦難を乗り越えていく。宇宙の誰もがそのファウンデーションを物理的に認識していた。
ところが前回の作品で、セルダンブランの予測をくつがえす人物が登場した。ミュールというミュータントで、人間の心を操ることであっという間に第一ファウンデーションを支配下に収めた。ところが第二ファウンデーションはどこにあるかわからない。このまま放置すれば、セルダンプランによってミュールは滅ぼされてしまう。そこで懸命になって第二ファウンデーションを探そうとした。これが前作のラスト。
ということで今回は2部の作品に分かれている。
1部は『ミュールの探索』というタイトルで、結果として第二ファウンデーションに屈服するミュールを描いたもの。セルダンが密かに創設した第二ファウンデーションは、ミュールと同じ能力を持っている集団だった。だからミュールは罠にかかり、あっさりと洗脳されてしまう。
2部は『ファウンデーションによる探索』というタイトル。ミュールが消えたことで復活した第一ファウンデーション。ところが彼らはミュールを滅ぼした第二ファウンデーションを恐れる。なぜなら人間の心に憑依して操ろうとするから。
セルダンが計算した平和な未来がやってくるためには、銀河の住人たちがその計画を意識するのはマズい。予言は大勢の人間が意識を向けることで成就しなくなる。それゆえ第二ファウンデーションの集団は、第一ファウンデーションの恐れを利用することにした。
第二ファウンデーションの存在を忘れてくれるのがベスト。そうすることで影ながらセルダンプランを支援することができる。だけどミュールの滅亡によって第二ファウンデーションを意識した人たちの心を変えるのは難しい。
そこで巧妙な仕掛けが実行された。これが最高に面白くて、前半部分の結末として素晴らしい内容だった。結論から言えば、第二ファウンデーションは消滅したと思わせる方法。憑依の恐怖を利用することで、とてつもない大どんでん返しを仕掛けた。見事だと言うしかない。
さて続編はどんな展開になるんだろう。いまのところ1000年のうちの半分くらい経過した。まだ500年くらいは残っている。人気小説の『十二国記』に匹敵するような壮大な歴史物語になってきた。続編が楽しみだなぁ。
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