捻れた母と娘の想いが愛おしい
血の繋がった親子だと言っても、究極的には人間同士。なんとなく虫が好かなくて、相性が良くないということはあるはず。血縁があるからといって、どんな親子も仲良しだとは限らない。それでも心のどこかで相手の幸せを願っているのが親子なんだろう。
そんな微妙な母と娘を描いた映画を観た。なんてことないドラマなんだけれど、この二人の俳優の演技が本当に素晴らしい。複雑な母娘の関係が、ラストシーンでは新しい扉を開けそうな予感で終わる。そんな二人がとても愛おしく感じる作品だった。
2022年 映画#113
『レディ・バード』(原題:Lady Bird)という2017年のアメリカ映画。若手の女優ではボクのイチオシの一人であるシアーシャ・ローナンが主演している。彼女が出ていることで観ようと思った作品。
シアーシャ・ローナンの作品はいくつも観ているけれど、もっとも最近に観たのは『若草物語』の映画化作品で主人公のジョーを演じた彼女。その2年前がこの作品で、この映画のクリスティンとジョーはそっくりのキャラだった。
もし南北戦争時代から現代にジョーがタイムトリップしたら、きっとこのクリスティンになるのでは、と思うほど暴走キャラがそっくりだった。ところがジョーとちがってクリスティンの母親は優しくない。
母親のマリオンは看護師。夫は失業してうつ病だし、長男も大学を出たのに仕事が決まらない。それだけに娘には厳しくて、二人は常に衝突している。高校卒業が近づいたクリスティンは地元のサクラメントを離れてニューヨークの大学に進学したかった。だけど母は地元の大学しか許さない。
基本的にクリスティンの高校最後の生活が描かれ、彼女の初体験と親友との友情がメイン。とにかくクリスティンは弾けたキャラで、狙った男性をゲットすることしか頭にない。そのためには親友と距離を置くことも平気でやってしまう。
その一方でニューヨーク行きのために勉強しつつ、失業中の父に相談しながら奨学金の申請も進める。次々と不合格通知が届くなか、一つだけ補欠合格の通知を手にした。父には報告したけれど、なかなか母には打ち明けられない。卒業式の日にその事実を知った母は、娘とまったく口をきいてくれなくなった。
結局、クリスティンは母と和解できないままニューヨークへ向かう。寮に着いて荷物を整理していると、入れた覚えのない封筒が出てきた。そのなかはボロボロになった紙の束だった。
母のマリオンは、クリスティンに対する愛を伝えようとして手紙を書いていた。だけど何度トライしても気持ちをうまく書けなくて、ゴミにして捨てていた。それを見つけた父が集め、クリスティンのバッグに忍ばせていた。
母の気持ちを知ったクリスティンは、実家に電話を入れる。だけど留守電になっていた。そこで彼女が母への想いと録音に残したところでエンディングとなる。素敵なラストシーンだったなぁ。
シアーシャ・ローナンの演技は素晴らしかったけれど、母のマリオンを演じたローリー・メトカーフという女優さんも最高だった。二人が多くの映画賞でノミネートされたのは当然だと思う。シアーシャ・ローナンはアカデミー賞のノミネート常連なので、きっと近いうちに受賞するだろうな。笑いつつも心温まる素敵な映画だった。
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