象徴的なゴラムの多重人格
ボクが愛してやまない『指輪物語』関連の作品たち。以前のブログでも書いたように、来月の2日になるとAmazonプライム限定で『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』というドラマ作品が配信開始となる。
楽しみで仕方ないけれど、できるだけ事前情報なしで楽しみたいと思っている。だからあえて情報収集せず、じっと我慢して配信開始の日を待っている。でも気分を盛り上げるため、『ホビット』の3部作に引き続いて、『ロード・オブ・ザ・リング』の3部作を久しぶりに再見している。
ということで今回は第2弾。
2022年 映画#129
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(原題:The Lord of the Rings: The Two Towers)という2002年の作品。3作品とも面白くて甲乙つけ難い。でも物語を大きく展開させているのは、この第2作目であることはまちがいない。
有名な物語なのでストーリーは割愛。興味のない人は、原作も読まないし映画も観ないだろうからね。原作も同じタイトルで書かれていて、映画に比べると圧倒的に内容が濃い。ローハン国に関しても詳細に語られていて、ローハン王のセオデンとアラゴルンとの間には、実は深い因縁がある。
映画では語られていないけれど、最終的に人間の王となるアラゴルンは、若いころから中つ国を放浪していた。そしてローハンやゴンドールで仕官していた時代がある。彼は王の血筋でありエルフの流れも継承しているので、実は見た目より長生きで歳を食っている。
映画ではセオデンが老人で、アラゴルンが壮年という雰囲気。だけど実は二人の年齢はさほど変わらない。まぁこれはオタクだけが知っているネタなので、映画しか知らない人は気にしないでいいと思う。あまりストーリーに関係ないからね。
この作品では場面が3つに分かれる。指輪を葬るためにモルドールを目指すフロドとサム。裏切り者である魔法使いのサルマンの攻撃から、ローハン国を守ろうとするアラゴルン、レゴラス、ギムリ、ガンダルフ。そしてエントという『木の髭』を動かして、サルマンの本拠地であるアイゼンガルドを滅ぼそうとするメリーとピピンのホビットたち。
この流れは第3部でも継承される。メリーとピピンはアラゴルンたちと合流。舞台はゴンドール国に代わり、モルドールの軍隊と真正面からぶつかる。一方フロドとサムは、ひたすらモルドールに向かって苦難の道を進むという展開。
この第2作で忘れていけない存在がゴラム。彼は長期間指輪を持っていたことで、完全に心を病んでいる。多重人格者、あるいは統合失調症の状態で、スメアゴルという本当の自分が出たり消えたりする。要するに善と悪の境界線に常に立っていて、どちらに転ぶかわからない不安定な存在。
ただひたすら指輪を取り戻すことを願っていた。場合によってはフロドを殺してでも指輪を奪おうと考えている。だけどフロドに優しくされたことで、スメアゴルに戻ろうとしている部分もある。そんな不安定なゴラムの多重人格が、この物語全体の世界観を象徴しているように思う。
もちろん大勢の人が結論を知っているはず。このゴラムがいなければ、サウロンが滅びることはなかった。フロドとサムの努力も水の泡になってしまっただろう。この作品の影の主人公は、まちがいなくゴラムだと思う。もしこの物語を知らなくて興味を持った人は、是非とも映画からどうぞ。
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