礼儀を金で買う悲しさ
人間の行動結果は鏡のようなもので、親切にすれば親切が返ってくるし、暴言を吐けば自分も暴言を浴びることが多い。もちろんこちらが親切に接しても、相手が同じものを返してくれるとは限らない。ただ確率的な観点として、親切でいるほうが快適に過ごせる可能性が高い。
誰もがそう考えて行動すれば、世の中はもっと過ごしやすくなるはず。ところが現実は悲しい。スーパー等で買い物をしているだけで、クレームをつけて怒り狂っている人を見かけることもあるし、心ない店員の対応を受けている人を見て怒りを覚えることもある。
そんな人間関係をスムーズにしていこうと思い、あることを始めたカフェがある。
店員に礼儀正しい言葉で注文した人には料金が安くなるサービスを導入したカフェ
店員と顧客のトラブルを減らすため、礼儀正しい言葉で注文した人には料金が安くなるサービスを始めたのはイギリスのカフェ。このサービスを導入したことで、店員と顧客のギスギスした感じがなくなった。店員もそうした顧客に対して丁寧にサービスをするようになり、みんなが幸せな気分になっているそう。
このカフェの料金システムがリンク先の記事に紹介されている。
チャイ1杯:5ポンド(約840円)
チャイを1杯お願い:3ポンド(約500円)
こんにちは!チャイを1杯お願いできますか?:1.9ポンド(約320円)
この差は大きい。金額の差が最大で500円もあるのなら、丁寧に注文しようと思うのが人情。このカフェによると、ぞんざいな言葉で840円を請求された客はいまのところいないそう。まぁ、そうなるだろうと思う。
これでみんなが幸せになるのならいい。だけどボクはどうしても違和感が拭えない。ここまでしなければ礼儀正しくできないことが、なんとなく悲しく感じてしまう。320円の注文の言葉なんて、特別なことではなく普通の会話だと思う。
このシステムをお店の立場で見たら、顧客の礼儀をお金で買っていることと同じ。もっとも丁寧な注文には500円を払いますよということ。おそらく中間の500円が従来の価格であって、その前後はペナルティやサービスという意味合いなのだろう。だとしても礼儀を金銭に置き換えているのは同じこと。
礼儀正しく注文して、礼儀正しく接客する。これって普通のことじゃない? なのに特別なシステムにしなければいけないほど、現代人の心は荒んでいるということなのだろうか。このカフェの試みは面白いけれど、やっぱり悲しくなってしまう。
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