敵も味方も必要な戦争資金
ロシアによるウクライナ侵攻によって、つい先日には第三次世界大戦が起きるかもという危機感が世界を走り抜けた。NATO国であるポーランドにミサイルが落ちて死者が出たから。いまのところはウクライナの迎撃ミサイルという見方が優勢で、NATOとしてはロシアに報復するという姿勢は見せていない。
とにかく戦争というのは複雑で、単純に敵味方を分けられない。ボクがいま読み進めている第二次世界大戦におけるユーゴスラビアも、誰が敵で、誰が味方なのかわからなくなってしまうほど組織の思惑が入り乱れている。この時代の物語を読みつつも、現代に置き換えて考える意味があるような気がしている。
2022年 読書#108
『石の花3』坂口尚 著という漫画。第2巻の感想については、『侵略される多民族国家の悲劇』という記事に書いているので参照を。
第2巻の感想でも書いたように、当時のユーゴスラビアは多民族国家。クロアチア、セルビア、そしてスロベニアという民族が混在している。さらに時代的にイデオロギーによる分裂も起きている。
ドイツ軍に対抗するのはセルビア人を中心としたチェトニクという組織。ユーゴスラビア王国の流れを受けていて、連合国からもドイツに対抗する正式な組織として認識されている。同じくドイツに対抗している組織に、共産主義者によって構成されたパルチザンがある。とにかくややこしい。
この第3巻では、共にドイツと戦っているはずのチェトニクとパルチザンが戦闘を始めた。つまり内戦状態。将来のユーゴスラビアの悲劇が見えてきそうな状態。主人公のクリロという少年もこの内戦に巻き込まれてしまう。参加していた反ドイツゲリラがパルチザンと提携したから。といってもこれまた複雑。
パルチザンには過激な共産主義の人間もいれば、反ドイツということで参加している人もいる。それぞれの思惑が、この先になってさらに分裂していくような予感がしている。さて今回のメインはモルトヴィッチという人物。ユーゴスラビア王国が隠している埋蔵金のありかを知っていると見られる人物。
それゆえドイツ軍も、そして連合国軍もモルトヴィッチを探している。戦争に必要なのは資金だから。クリロの兄のイヴァンが二重スパイなのは明らかになってきた。友人であるドイツのマイスナー大佐に接触しながら、イギリスの意図を受けて動いている。イヴァンもモルトヴィッチの行方を求めていた。
そしてマイスナー大佐に収容所から助け出されたフィー。クリロの親友だけれど、彼が死んだと思って車に飛び込んだ女性。一時的に目が見えなくなったけれど、この第3巻では視力を取り戻している。だけど彼女の消息を知った叔父に利用されて、マイスナー大佐に近づいて機密文書を盗むように命令される。
そしてさらにややこしいことに、そのモルトヴィッチがドイツのマイスナー大佐に接触してきた。フィーを運んでいる車を襲わせ、それを助けるフリをしてマイスナー大佐と懇意になっている。もちろん変装してだけれど。この第3巻は、これ以降につながる伏線がばら撒かれている状態なんだろう。
今朝から第4巻を読み始めている。第5巻で終わりなので、物語はクライマックスに近づいているはず。読書メモとして書いているけれど、混沌としていてボクもカオス状態になりながら読み進めている。
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