老化の仕組みを知る意味
昨日のブログで3ヶ月に及ぶ歯の治療が終わったことを書いた。不具合の原因は高校生時代の治療の尻拭いや、7〜8年前に抜歯した親知らずによるもの。そういう意味では原因が明確になっているので、それ以外の部分については従来どおりのケアをしていけばいいということでもある。
ただ今回歯科医に通って、痛切に感じたことがある。それは人間が『老いる』ということ。
今回の最大の不具合の原因である高校時代の治療。だけどそれは40年以上も前のことであって、本当に問題があったならもっと早く不具合が出ていたはず。なのに40年以上も問題なく過ごしてきた。つまり不具合が出ることのないよう、ボクの肉体が正常な状態を維持してくれたということ。
だけど50代の後半から還暦を迎えるようになって、その回復機能が効かなくなった。要するに肉体の機能が確実に『老いて』きたということ。以前なら対処できたことに関して、お手上げとなって不具合を発症してしまう。
ある意味ショックなことだけれど、自分の肉体に関する心構えを新たにできたと思う。いままで問題ないと思っていたことでも、いつ不具合となって出てくるかわからない。それが『老いる』ということの意味。ある本を読んで、その気持ちをさらに高めることができた。
2022年 読書#109
『生物はなぜ死ぬのか』小林武彦 著という本。著者は生物学の教授で、生命の発祥から老化の仕組みについて解説されている。なぜ生物が老いるのかについて、とてもわかりやすく書かれていた良書だった。
人間の細胞には分裂回数に限界がある。平均的には50回程度で細胞が死んでしまう。だけど幹細胞というものがあって、これが常に新しい細胞を供給してくれている。だけど年齢を重ねると幹細胞も機能が落ちてくる。だから細胞を複製させることが難しくなり、いわゆる老化が起きる。肌に艶がなくなったりシワができたり、髪の毛が白くなるのはこうした仕組みによるもの。
ただこの本では、生物の進化という観点から老化を取り上げている。その内容がこの本のタイトルでうまく説明されている。
『生物はなぜ死ぬのか』
実は死なない生物もいる。詳しいことはこの本を読んでもらうとして、単細胞生物では死なないことを選択しているものがいる。だけど多くの生物は老化、そして死という道を選んだ。それは決してネガティブな選択ではなく、種の進化の結果として老化現象を選んでいる。
自然界で自分たちの種を残していくため、生物は長い時間をかけて特定の能力を獲得していった。その進化の一環として獲得した性質として、老化や死があると著者は述べている。その背景を知ることで、死生観が大きく変わる人がいると思う。
ボクはもともと『死』というものを肯定的に受け入れていた。もちろん怖いけれど、この世界には始めがあれば終わりがある。その事実を受け入れることで、どうすれば自分の生を充実させるかを本気で考えることができる。
そしてこの本を読んで老化の仕組みを知ることで、さらにその意が強くなった。『死』は悲劇でも罰則でもなく、生物が進化の過程で必要だとして取り入れてきたもの。『個人』としての死と、『種』としての死を考えることで、『死』の全体像が見えてくるんだと思う。
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