懐かしい妖怪たちと再会
ボクは図書館のヘビーユーザーなので、今月はちょっとバタバタしそうな気がしている。というのは神戸市の図書館は今年の年末から来年の1月いっぱいをかけて、大規模なシステム変更を予定している。
マイナンバーカードで本を借りられたり、スマートフォンにバーコードを表示しての利用も可能となる。さらにネット上に自分専用の本棚ができたり、過去の貸出履歴の閲覧もできるようになる。ただその変更に対応するため、来年の1月は図書館の利用ができない。
それゆえ今月の15日以降の貸出に関しては限度が倍の20冊になり、貸出期間も2週間なのが7週間まで延長される。だからその期間に借りる本を検討している。すでにネットで予約している本は数が殺到しているのであてにできない。だから予約の入っていない作品、あるいは地元の灘図書館の蔵書を探してギリギリの20冊をゲットして年末を迎えたいと思っている。
そんな状況なので、予約待ちの作品はとても貴重。ほぼ1年近く待っていた作品がようやく手元にやってきた。
2022年 読書#113
『もういちど』畠中恵 著という小説。妖怪が活躍する『しゃばけ』シリーズの第20弾の作品。第19弾までは順調に読めたけれど、昨年に出版されたこの作品から予約待ちになってしまった。だからレギュラーで登場する妖怪、つまり妖(あやかし)たちに再会ができてうれしかった。
主人公は一太郎という江戸の廻船問屋兼薬種問屋の跡継ぎ息子。祖母は著名な妖だったので、能力はないけれど妖たちを見たり、話をすることができる。それゆえ優しい一太郎を慕って、彼の元には大勢の妖たちが集まり、一緒に暮らしている。
一太郎を幼いころから守っていたのは、手代の佐助と仁吉。もちろん二人とも妖で佐助は犬神、仁吉は白沢という妖であることを周囲に隠している。人間で知っているのは、妖の血を引いている一太郎の母であるおたえだけ。
それ以外にも家鳴り、屏風のぞき、貧乏神の金次等のレギュラー陣も元気だった。いつも通り5つの短編が連続ドラマのように綴られている。
『もういちど』
『おににころも』
『ひめわこ』
『帰家』
『これからも』
という5つの短編。一太郎の特徴は極端に身体が弱いこと。すぐに寝込んでしまうので、両親だけじゃなく佐助と仁吉も気が気じゃない。それがこの物語の特徴なんだだけれど、今回は少し様子が変わってしまった。
春なのに江戸では異常な日照りが続いていた。全く雨が降らず、このままでは飢饉が起きてしまう。その理由は天の星の入れ替わりがあったから。その騒動に一太郎は巻き込まれ、星とぶつかったことで赤ちゃんに戻ってしまう。
今回の5作品は、赤ちゃんになった一太郎が成人した姿に戻るまでの物語。祖母が妖なので、彼も異常な速さで成長していく。半年くらいで3歳になる。だけど他人に見つかるとまずいので、田舎に隠れて成長するまで江戸を離れていた。
赤ちゃんになって人生を再スタートした一太郎は、以前と違って完璧な健康体だった。だから彼は少年時代に体験できなかった遊びや運動を満喫する。剣術も習ったことで暴漢をやっつける場面もあった。従来の一太郎では想像もできないこと。
だけど成人に戻っていくにつれ、咳が出始め、寝込むことが多くなった。最終的に以前の一太郎に戻ったけれど、やはり身体の弱い彼だった。これがなんとも切ない。知らなければ想像で済んでいたこと。だけど健康な肉体を経験してしまった一太郎にとって、それを失ったことの悲しみは余計にキツい。
いつもの一太郎に戻ってホッとしつつも、なんとも切ない物語の終わりだった。そして次回からもいつもと同じように事件が起きて、彼が解決していくことになるのだろう。時々は寝込みながらね。
ちなみに今年に出版された続編はすでに図書館で予約済み。だけど大量の予約が入っているので、一太郎と妖怪たちに会えるのは来年になるだろう。でも久しぶりに彼らに会えてとても幸せな気分だった。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。