仕事の喜びを「どこ」に置く?
どんな仕事でも、それなりに喜びを感じる部分があるはず。そうでないとその仕事を続けていくことはできない。ボクは転職回数が多いので、喜びを見失った状況がよくわかる。例えば大金を稼ぐことが仕事の喜びだという人なら、ある程度きつい仕事でもモチベーションを維持できる。
逆にいくら大金を積まれても、やりたくないこともある。わかりやすい例で言えば殺し屋がそう。ボクは億の金を積まれても人を殺せない。でもそうじゃない人も世の中にはいるだろう。仕事に対して「どこ」に喜びを感じるかは、その人の自由だと思う。
ただ幸せな気持ちでいたいなら、仕事の喜びは「ここ」に置くべきだと感じさせてもらえる映画がある。久しぶりに観て、改めてそのことを感じさせてもらえた
2022年 映画#208
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(原題:Chef)という2014年のアメリカ映画。ボクは過去に観たことがある。でも妻がまだ観ていなかったので、NHKのBSで放送されていたのを一緒に観た。
主人公はカールというフランス料理のシェフ。ロサンゼルスの一流店で有名な料理人として働いているけれど、店のオーナーの意向に沿ったことでフードブロガーに料理を酷評されてしまう。怒り狂ったカールはネットの知識もないのにTwitterでブロガーに罵詈雑言を書いてしまった。
当然ながら炎上する。怒りが収まらないカールは、そのブロガーに挑戦状を叩きつける。ところが再びオーナーに邪魔されたことで、レストランを辞めてしまう。そのうえそのブロガーに食ってかかったところを店の客にネットで拡散されて、再就職もできなくなってしまった。
カールには離婚した妻と暮らしているパーシーという10歳の息子がいる。カールはシェフとしてスタートした原点であるマイアミに戻り、キューバーサンドを提供するフードトラックを始めることにした。ちょうど夏休みだったパーシーは、父との旅を楽しむつもりで手伝うことになった、
ロサンゼルスで片腕として働いてくれたマーティンもそのチームに参加。3人の男たちのマイアミからカリフォルニアまでのフードトラックの旅が物語の中心。ネットに詳しいパーシーのおかげで、カールのフードトラックは大成功。映画の終わりとしては、彼を酷評していたブロガーの資金提供によって新しい店を持ち、かつ元妻とも復縁するというストーリー。ハートフルなコメディで、何度観ても素敵な気持ちになれる作品だった。
まだマイアミいるころ、3人はフードトラックで使う道具搬入を手伝ってくれた人たちに、無料でサンドイッチをふるまうことになった。パーシーも生まれて初めて父の仕事を手伝うことができて喜ぶ。そのとき、一つだけ焦げてしまったサンドイッチがあった。
パーシーはそれを出そうとするが、父に止められてしまう。「無料なんだから、ちょっとくらい焦げていてもいいじゃないか」とパーシーは言った。でも父は息子に本気で語る。自分の作った料理で食べた人が笑顔になるのがこの仕事の喜び。そのサンドイッチを食べた人は笑顔になるのか?
そう言われたパーシーは、素直にうなずいてサンドイッチを作り直す。この映画のテーマはそこで全てが語られていると思う。カールが料理を作る喜びは、顧客が笑顔になってくれること。もちろんお金も必要。だけどそれより大切なのは「美味しい」と言ってもらえることだった。
その想いがカールにあったから、窮地に陥っても成功している。誰もが笑顔になれること。そこに仕事の喜びを置いている人は、全力でそれを追求しようとする。この映画を観ると、「どこ」に仕事の喜びを置くかについて教えてもらえる気がする。
ちなみにカールを演じたジョン・ファブローが監督と脚本もやっている。そのせいか、『アイアンマン』で共演しているロバート・ダウニー・Jr.や、『アベンジャー』でお馴染みのスカーレット・ヨハンソンも出演している。さらにちょっと意地悪なオーナー役で、ダスティン・ホフマンがいい味を出していた。
そんな豪華なキャストが集まったというのは、ジョン・ファヴローの仕事の喜びが「どこ」にあるのかわかるような気がするなぁ。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。