カットされた重要人物
年始の読書に関して一抹の不安がある。神戸市図書館のシステム変更で、通常は2週間の貸出期間が7週間に延長されている。それでシリーズ作の通読にトライしている。ところがまだ7冊も残っている。それも後半に行くほどページ数が増えてくる。
従来なら予約の入っていない本は期間延長が可能だった。だから予想としてはさらに2週間は延長できるはず。だけど図書館のシステムが休止状態になっているので、延長できるかどうか不明。今月末にならないとシステムが利用できない。
期限は2月2日。万が一にも延長できない場合に備えて、その日までに読了したほうがいいのかも。だとしたら読書ピッチをあげないとヤバい。そんな状況なので、時間を見つけてはコツコツと読み進めている。昨晩もそのうちの一冊を読了した。
2023年 読書#5
『新版 指輪物語2 旅の仲間 上2』J・R・R・トールキン著という小説。前作についての感想は『ついに最後の旅が始まった』という記事に書いているので参照を。
映画の『ロード・オブ・ザ・リング』は3部作。いま読んでいるところはその1作目にあたる部分で、4冊の文庫に収録されている。今回の第2弾は、フロド、サム、ピピン、メリーの4人のホビットが住み慣れたホビット庄を出て、エルフのエルロンドが暮らす裂け谷に到着するまでの物語。
ブリー村の「踊る小馬亭』で未来の人間の王であるアラゴルンと出会い、5人での旅がメインとなる。今回も映画しか知らない人のために、原作との違いだけを書いておこう。
ブリー村を出て風見ヶ丘という場所で、フロドはサウロンの手先である指輪の幽鬼に襲われる。肩を邪悪な剣によって刺されたことで、生涯を通じて心に影響を与える深い傷を負ってしまう。映画では瀕死のフロドを助けにきたのがエルロンドの娘のアルウィン。未来にアラゴルンの妻となる女性なので、映画としてはこの方がウケると考えたのだろう。
だけど原作で5人を迎えに来たエルフは、グローフィンデルという高貴な男性エルフ。そしてフロドが白馬に乗って浅瀬を越えるシーンも、原作では意識朦朧としたフロドが一人で切り抜けている。エルフが川を氾濫させたことによって、黒の乗り手たちは流されてしまう。
映画ではこの氾濫はアルウェンがやっているけれど、原作では父のエルロンドが川を氾濫させた。さらにガンダルフも手伝っている。まぁ映画としては美しい女性が魔法を使う方がいいだろうからね。
そしてこの第二弾では、映画で完全にカットされている重要人物が登場する。フロドたちが旅に出てブリー村に到着する前、古森で悪意を持つ柳の木に捕まってしまう。それを助けてくれたのが、トム・ボンバディルという老人。彼について映画は無視することに決めたらしい。
というのは解釈が難しいキャラだから。トムはこの世界の創世記から存在していた。誰にも支配されない超然的な人物で、サウロンでさえトムを支配することはできない。だからフロドに指輪を渡されて指にはめても、姿が消えることもない。指輪の誘惑もまったく受けない。
だからと言って、身を捨ててサウロンと戦うという意思もない。古森の主人として、ただそこにいるだけ。まるで仙人のようなキャラ。実はガンダルフやエルロンドは、トムに指輪を預けることも考えた。だけど指輪の影響を受けないということは、関心を持たないということ。だからどこかに失くしてしまうということが考えられた。それて彼に預けるという案は却下されている。
というような重要人物なんだけれど、彼を映画に入れるとややこしいことになってしまう。それでカットされたんだと思う。このトムと妻のゴールドベリは素敵な二人。どんなキャラなのか知りたい人は、ぜひとも原作を読んでもらったらと思う。さて、いよいよ次の作品では旅の仲間が集合することになる。
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