久しぶりにぶっ飛んだ小説
ワン・ダイレクションというイギリスの伝説的なグループがいた。2016年に活動停止して、全員がソロ活動をしている。最も成功しているのは、グラミー賞を賑わしているハリー・スタイルズだろう。ボクも彼のアルバムは大好きで何度も聴いている。
他のメンバーも素晴らしいミュージシャンたちで、最近ではルイ・トムリンソンのニューアルバムもボクのヘビロテに入っている。このメンバーでボクの一番のお気に入りがナイル・ホーラン。彼の雰囲気と音楽に、いつも優しい気持ちになって癒される。
そのナイル・ホーランは6月にニューアルバムをリリースする予定。それに先駆けてシングルが発表されている。昨日になってその最新曲のミュージックビデオが公開された。『Heaven』というタイトルで、何度聴いても心が温かくなるメロディ。せっかくなのでリンクしておこう。
さて、久しぶりにぶっ飛んだ内容の小説を読んだ。いや、そもそも常にぶっ飛んだ作品を書いていた作家。ただ映画化された作品で、その映画がまぁまぁだったので原作を読んでなかった。でも初めて原作を読んでびっくり。全く内容が違う。そして最高にぶっ飛んでいた!
2023年 読書#22
『バトルランナー』スティーブン・キング著という小説。相変わらず彼の著作の全制覇に挑戦中。なんせ作品が多いから、まだまだ時間がかかりそう。この作品はスティーブン・キングとなっているけれど、本来は彼の別名であるリチャード・バックマンという名前で出版されていた。
彼がバックマンという別ペンネームを使った由来は面白い。これについてはこのブログで触れないけれど、名前が知られているかどうかで本の売れ行きに影響のあることがよくわかる。これはスティーブン・キング自身がはっきりと述べている。
バックマンの名前で『痩せ細りゆく男』という作品がある。とても怖くて面白い物語。これは最初2万8千部しか売れなかった。といっても、これだけ売れたらすごいけれど。でもこの作品がスティーブン・キングによるものだとわかったとたん280万部も売れている。つまり本の売れ方などそういうもの、とスティーブン自身が業界を揶揄しているのが面白かった。
さて、話を戻そう。『バトルランナー』は近未来の物語。貧困の差は激しく、スラムに暮らす人間に未来はない。主人公のベンは、妻のシーラ、そしてまだ1歳半の娘と暮らしていた。娘がインフルエンザにかかったのに、その薬を買う金さえない。そこでベンはある決意をする。
『ゲーム』というのがテレビ業界でもてはやされていた。人間が人間を殺すことをショーにしたもの。つまり公開処刑を楽しむという、古代ローマの剣闘士と同じ質のもの。ベンは競争率の高い選考を通過して、『ランニングマン』という最高級の番組の出演者に選ばれた。
ゲームのスタートと同時に、全米の殺し屋から狙われる。1時間逃げたら、ベンに100ドルが入る。もし30日間逃げ通したら、10億ドルという大金が転がり込む。もし途中で死んでも、それまでの賞金は遺族に支払われる。もちろんベンを殺した人間にも大金が払われるし、居場所を通報するだけでも賞金がもらえる。
これまでの最高記録は1週間ほど。そんな過酷なゲームにベンが挑むという物語。ぶっ飛んだ内容だけれど、格差社会について痛烈な批判を込めた内容でもある。ベンの逃亡は巧妙で、ハラハラドキドキしながら応援してしまう。映画はこのゲームを真似ているだけで、全く内容がちがう。
もし原作を読んだことのない人がいたら、かなりオススメの内容。映画を観た人でも別の作品だと思った方がいい。ラストは想像できたけれど、失うものがない人間の執念を感じさせる終わり方だった。ハッピーエンドじゃないけれど、ベンの最後の一撃にどこかスカッとするものを感じた。いやぁ、本当に素晴らしい物語だった。ただし、かなりエグイ。まぁ、それはスティーブン・キングのあるあるだけれどね。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。