読み続けるべきか悩む作品
毎日5冊の本を並行して読んでいる。そのうち4冊は偶然にも時代小説となっている。紙の本は『徳川家康』で、電子書籍で『新・平家物語』、『源氏物語』、そして『北条政子』を読んでいる。時代小説といっても時間があちこちに飛ぶので、自分の頭が常にタイムトラベルしている。
それでも切り替えができるので、この4冊を読むのはさほど苦労していない。むしろかなり楽しんでいる。ところがもう1冊がなかなか進まない。文字でなくて漫画だというのに。
その作品は『はだしのゲン』という漫画。子供の時に読んで以来なので、昨年に無料配信されていた4巻分をダウンロードした。そして久しぶりに読んでみたけれど、どうにもこうにもこの作品に対する拒絶感が強い。とりあえず第2巻まで読み終えた。
2023年 読書#24
『はだしのゲン 第2巻 麦はふまれるの巻』中沢啓治 著という漫画。第1巻の感想については『はだしのゲンを検証してみた』という記事に書いているので参照を。
この作品について説明する必要はないだろう。広島の原爆投下に関して、被爆した当時の人たちの苦悩を描いた作品。主人公の中岡元は、原爆によって父、姉、弟を亡くした。どうにか生き延びた身重の母と二人で逃げた。そこで第1巻は終わり。
第2巻は妹の友子の出産。そして飢えと闘いながら必死で落ち着き先を探そうとするゲンと母親の様子が描かれている。どうにか父たちの遺骨を掘り起こし、母の親友の家に落ち着いたゲンたち。だけど親友の姑や子供たちにイジメにあって苦しむという内容。
なぜボクがこの作品をなかなか読み進めれらないかといえば、作者の「怒り」が物語全体に染み込んでいるから。確かに戦争はひどい。そして原爆ほど悲惨な出来事はない。それがどれほどのものだったか、体験者でしか描けないことはあるだろう。そういう意味では貴重な漫画だと思う。
ただ、その「怒り」から昇華されていくものが見えない。最後まで読まないとわからないけれど、人間の負の面ばかりにフォーカスされていて、読者の憎しみを煽り立てているようにしか感じられない。それが戦争なんだと言われたら、戦後生まれのボクに返す言葉はない。
でも憎しみを向ける対象が、かなり偏っているように感じている。それがどうにも心地よくない。当時の軍部や天皇制を批判するのはわかる。そしてそんな戦争に加担した人たちを酷い人間として描く気持ちも理解できる。だけど「何かが違う」という印象が拭えない。
第1巻の感想でも書いたけれど、それは「自虐史観」がこの物語の芯になっているから。あの戦争を起こしたのは、そして恐ろしい空襲で人々が苦しみ、原爆によって大勢の人が命をなくしたのは、当時の日本人が戦争を起こした「加害者」だったという空気感。
だから反省しなければいけない、アジア諸国に謝罪しなければいけない、という強いメッセージを感じてしまう。これがそのまま憲法9条の神格化に直結しているような印象を持ってしまう。これはある種の印象操作としか思えない。
今は第3巻を読み始めたところ。だけど思うように進まない。4巻まで読み通すかどうか悩み中。どうなるかわからないけれど、第3巻を読了したら感想を書いてみようと思う。
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