好みの拡大に必要なのは『時間』
コンテンツの選択に人の好みが反映されるのは当然。音楽がわかりやすい。聴いた瞬間に大好きになる曲があれば、即座に拒否反応が出る曲もある。映画も同じで、どうしても好き嫌いが出てくるもの。まぁそれはそれでいいと思う。人生の時間は限られているので、好きなものだけで楽しむことはアリだろう。
でも創作に関わろうとするのなら、好みの範囲を拡大することは必要。自分の知らない世界を知ることで、好みに同化させていくことができる。そうすることで、これまでにない新しい世界が見つかると思うから。
だけど好みというのは強烈な引力を有している。ある記事を読んで、改めてそのことを感じた。
その曲が好みかどうかは「5秒間」聴けば分かる、人は曲の「音」ではなく「雰囲気」に反応することが実験で判明
リンク先の記事は音楽に関するもの。ニューヨーク大学の心理学チームが行った研究をまとめた記事。よく考えられた研究方法なので、とても説得力のある内容だった。
結論から言えば音楽を5秒間聴くだけで、好みかどうかを判断できることが証明されている。5秒というのはかなり短い。なのに人間はそれが自分の好みのジャンルであるかどうかを判断できるらしい。実験によると、かなりの確率の高さで好みの曲を選択している。
もちろん知らない曲でも同じ。パッと聴いただけで、選んだ曲が自分の好みに合致していることがほとんどの人で確認されている。ビルボードのランキングを紹介している動画の場合、長くても10秒以内のものがほとんど。だけどランクインしている曲が好みかどうかは、十分に判断できるということになる。
人間の認知力ってすごいと思う。ただそれだけに、好みを広げたい場合はその能力が障害になる可能性が高い。「あっ、この曲はダメ」という判断も瞬時でやってしまう。だからそのジャンルの作品にはいつまでも出会うことができない。
好みのエンタメを楽しむだけなら、それで何も問題はない。自分のこれまでの人生で培ってきた好みを満喫すればいい。でも好みを広げたい人にとっては、人間が有する瞬間的な能力に対抗するエネルギーが必要になる。
ボクも音楽や物語に接するとき、好みの範囲を意識して拡大しようとしている。だから音楽に関しても、瞬間に判断しないよう気をつけている。少しでも気になったアーティスト、あるいは話題になっているアーティストに出会ったら、まずは最新のアルバムをじっくり聴いてみる。
不思議なもので、肌に合わないなぁと感じたアルバムが、自分にとって時間の経過と共に最高の作品になったことが何度もある。こんなとき、自分の好みが拡大したことを自覚できる。それは映画でも同じ。苦手だったジャンルや俳優さんの映画をあえて観ることで、新しい世界を知ることができる。
要するに好みの上書きには、ある程度の『時間』が必要だということ。好みを拡大したい人は、その『時間』を費やす忍耐力が欠かせない。自分の好みに脊髄反射をしていると、新しい世界に出会うことが難しくなる。それはつまり、脳が固定化していくということ。頭の柔軟性をキープするためには、時間をかけることを惜しんではいけないと思う。
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