戦争がもたらす狂気に鳥肌
朝から晴天なので最高気温は12度まで上がった神戸。それでも寒の戻りで全体として空気は冷たい。けれどこの寒さも今日を含めて3日ほどらしい。これから開花する桜も、この寒さで休眠打破をしていることだろう。
そんな寒さでも街を歩くと早咲きの桜は満開だし、同じく満開の沈丁花が香水のような魅力的な香りを放っていた。ほうき花桃の蕾は膨らんでいたし、今年はまだ見ていないけれど木蓮も咲き出しているはず。やっぱり春はワクワクするなぁ。
平和な日本ではやってくる春を楽しむことができる。でもウクライナでは戦争が続いているし、今日のニュースではイスラエルがガザ地区に大規模な空爆を実施した。少なくとも100人以上の人が犠牲になっているとのこと。
人間はいつになっても戦争をやめない。人を殺すことが正当化される戦争は、兵士たちの心を蝕み狂気を呼び起こす。そんな戦時下の兵士の狂気を描いた映画を観た。
2025年 映画#45
『フルメタル・ジャケット』(原題: Full Metal Jacket)という1987年のイギリス・アメリカ合作映画。スタンリー・キューブリックが監督した有名な戦争映画。ベトナム戦争を扱った作品で、久しぶりに観たけれど、戦争がもたらす狂気に鳥肌が立った。
ベトナム戦争の映画でボクがもっとも恐怖を覚えたのは『プラトーン』という作品。あの映画のエンディング近くの戦闘シーンはいまだに脳裏にこびりついている。監督のオリバー・ストーンがベトナムでの従軍経験があることで、リアリティの高い作品になったのだろう。
この映画は『プラトーン』に比べると、まだ客観的に鑑賞することができる。それでもスタンリー・キューブリックは兵士の狂気に焦点を当てていて、映像から伝わる世界に背筋がゾクゾクしてしまう。
主人公は海兵隊に志願した通称をジョーカーという兵士。映画は大きく2つのパートに分かれていて、前半はアメリカ国内における新兵の訓練がメイン。後半はジョーカーがベトナムに派遣されてからの物語になっている。
前半の狂気はジョーカーが世話することになったレナードという兵士に関するもの。やや発達障害の傾向が見られる太った兵士。何をやらせてもダメで、必死でジョーカーは彼を助ける。でもレナードのせいで全体責任を取らされるようになり、彼に対する風当たりが強くなった。
やがて心を病み始めたレナード。でも射撃に関しては素晴らしい能力を見せ、上官からも認められるようになった。けれどレナードはずっと銃に話しかけている。そしていよいよ明日に訓練が終了するという前夜、完全に狂ったレナードが実弾を込めた銃を手にした。そしてそれまで自分を罵倒し続けた上官を殺してしまう。
まだ戦地に行っていないのに、レナードは戦争がもたらす狂気によって心を病んでしまった。最終的に自殺するが、この前半だけでも戦争に関する狂気をリアルに感じることができる。
後半はジョーカーがベトナムへ向かう。仕事は報道部で、戦地での兵士の活躍を海兵隊の新聞で記事にすること。取材先で同期の通称カウボーイと再会し、彼の部隊の取材をすることになる。ところが戦争が激化して、彼も戦闘員として戦うことになる。
この後半は前線での恐怖が中心に描かれている。スナイパーがどこから狙っているかわからないし、仕掛け爆弾の恐怖もある。乱戦になるとただ銃を撃ちまくるだけで敵味方の区別もつかないような状態。結果としてジョーカーは生き残るけれど、前線の兵士たちの狂気がリアルに描かれている。
比較的古い作品なので、最近の映画のようにCGによる迫力には欠ける。それでも銃弾が飛び交う恐怖をリアルに感じられる。久しぶりに観たけれど、戦争の愚かさを感じられる素晴らしい作品だった。
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