間接的な恐怖にガクブル
今日は朝から晴天が続いていて、まさに春爛漫という1日だった。自宅マンションからスーパーまで往復しているだけでも、あちらこちらで満開の桜に出会うことができた。そしてツツジやハナミズキは蕾がふくらみ、六甲山系の木々も少しずつ緑色が増してきた。いい季節だよねぇ。まだ子供は春休みなのかな?
子供がいないので学校がいつから始まるのか知らない。でも今週には新学期がスタートするのだろう。我が家のすぐ近くに私立の女子中高がある。でも少子化への対応を迫られたようで、今年の中学1年生から共学のクラスが誕生している。
これまで毎日女子たちの通学を見ていたけれど、これからは少ないながらも男子の姿が混じることになる。それに合わせてか、土のグランドが全名改装されて人工芝になった。サッカーやソフトボール用のラインが敷設され、走り幅跳び用のレーンまである。おそらく男子が入学したことで、スポーツでの活躍を見込んでいるのだろう。
今年の中学1年生の男子が高校生になる頃には、高校も共学が導入されるとのこと。子供の数が減って私学は生徒の取り合いが始まっている。学校としての強みがないと、いずれ定員割れして学校経営が困難になるのは見えている。共学にするための設備投資は大変だろうけれど、生き残るには思い切るしかないのだろう。
さて、第二次世界大戦におけるドイツナチスの収容所を扱った映画を観た。ところがこれまでとは全くアプローチが異なる作品で、おぞましいシーンは全くない。なのにリアルな映像を超える恐怖を覚える作品だった。
2025年 映画#58
『関心領域』(原題:The Zone of Interest)という2023年のアメリカ・イギリス・ポーランドの合作映画。
物語の舞台となるのはドイツ軍将校が暮らす豪邸。その家の住人はルドルフ・ヘスという人物で、あの悪名高いアウシュビッツ強制収容所の所長。なんと収容所と壁を隔てた敷地にヘス一家の家族は住んでいた。
その家はかなりの豪邸で、庭も相当に広い。プールまで設置されている。この映画のほとんどはルドルフ、妻のヘートヴィヒ、子供たち、そして使用人たちの日常を描いているだけの作品。
豪華な食事をしたり、パーティーを開いたり、真夏は近くの川で泳ぎを楽しみ、収容所のユダヤ人から奪った上質な衣服などを私物化して暮らしている。夫のルドルフに異動の命令が出たとき、妻はこの家を離れたくなくて別居を選択した。それほどこの家を気に入っている。
ところが収容所から悲鳴が聞こえるし、銃殺する際の銃声も耳に届く。さらに遺体を焼却する匂いも充満している。なのに妻のヘートヴィヒはこの家での暮らしが自分の夢が実現したと思っている。貧しい育ちだったけれど、夫の出世によって贅沢な暮らしができるから。
妻の母がこの家にやってきて、娘が豪勢に暮らしていることに喜ぶ。だけれども数日でその家を離れて自宅に戻った。収容所での音や人間を焼く匂いが耐えられなかったから。本当に不思議な映画で、日常を描いているだけなのに言い知れない恐怖を覚えてしまう。
ちなみにルドルフはドイツ敗戦後に戦犯として絞首刑になっている。妻や子供たちはどうなったのだろう? この映画のわずか1年後にドイツは敗戦する。なんとも言えない心のモヤモヤを感じる秀作だった。
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