言語化できない物足りなさ
低気圧が近づいているので、今日は朝からどんよりしている神戸の空。午後からは時おり雨が降っていて、今夜から早朝にかけてまとまった雨が降るそう。
でも晴れ男のボクだから、今日の買い物中は傘がいらなかった。そして明日の外出時間も、今のところ雨が降ることはなさそう。何かと便利なことが多いので、この世を去るまで晴れ男でいられたらいいな。
さて、ある時代小説を読んだ。それなりによくできた物語だったけれど、言葉にできない物足りなさを感じる作品だった。
2025年 読書#46
『医は仁術なり やぶ医師天元世直し帖』沖田正午 著という小説。
Kindleのアプリで目についたので、なんとなく読んでみた物語。主人公はタイトルにあるように天元という江戸時代の医師。元々はある藩の御殿医を務めていた。その藩で容易ならないことが起き、家老の密命を受けて江戸詰の家老に会いに向かった。
ところが江戸に到着したらその藩はすでに改易となっていた。いきなり失業することになった天元は、知り合いになった町名主の世話で開業医となる。ある日、怪我をした複数の若い侍が病院にやってきた。
廃寺でいきなり坊主と早桶屋に襲われたとのこと。天元が剣の達人であることは、江戸に到着した時に噂になっていた。そこでその坊主と早桶屋を殺してくれたら大金を渡すとのこと。金に困っていた天元はその依頼を受ける。
でもその坊主と早桶屋に会ってみると、殺すどころか意気投合してしまう。そして事情を詳しく訊くと、その若い侍たちが街の商人をゆすっていたことがわかった。その背後にはある奉行の陰謀が絡んでいて、天元たち3人はその奉行の陰謀を阻止するという内容。
最初に書いたように、それなりに面白かった。ただなんとも言えない物足りなさを感じてしまう。その理由をじっくり考えてみると、あることに気がついた。
ここのところシリーズ作の映画にフォーカスしている。人気のあるシリーズ作品の特徴は、登場人物のキャラがユニークで際立っているということ。ボクがこの物語で感じている物足りなさは、天元を含めた主人公の3人のキャラが平凡に見えてしまうことが理由だと感じた。
その最大の理由は、天元、坊主、そして早桶屋のバックボーンが見えてこないこと。この3人が世直しをする動機として『何か』強いものがないと読者は共感できない。なんとなく悪い奴が許せないからという理由だけで、命がけで奉行を懲らしめようとは思わないだろう。
でもこれは読者として言える感想であって、いざ自分が小説を書くとなると簡単なことじゃない。物語を書くのはストーリーも大切だけれど、キャラを立たせることが最も難しい。そのことを実感しているだけに、この小説はある意味とても勉強になる作品だった。
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