優秀な組織の人
これは、仕事仲間から聞いた話。
ある番組で、ある題材を扱った企画を放送しようとしていた。
しかし、その直前で、
局の上層部からその内容は放送を見合わせるように
というお達しが来たらしい。
現場で作っている者たちは、当然ながら猛反発。
詳しく聞いてみると、
そもそも、放送しようとしていた内容は、
批判をしようとしていたものではない。
ただ、その時ちょっとした話題になっていた題材というだけで、
放送しても何の支障もない内容だったらしい。
だから、現場では、何も気に留めることなく
いつものように放送しようとしていた。
なのに、
確固たる理由もなく、そのジャンルを扱っているという理由だけで、
取りやめさせようとしていたらしい。
つまりは、どこからもクレームが来ている訳でもなく、
「今、そこをいじらないほうがいいんじゃない?」
という単なる腰の引けた姿勢だったということである。
最近のテレビ局がどこもこうとばかりとは言う事ではないが、
こういう事によって煩わしさを感じている現場の人間は少なくない。
上からの命によって泣く泣く従っている人たちもいる。
もちろん、その人たちの気持ちも充分理解する。
だが、今回聞いた話の現場の人間は、そこに抗ったという。
内容を差し替えるように言ってきた上層部に真っ向から、
「自分はこれを放送したい」と言い切り、
頑として譲らなかったという。
その後も、切々とテレビに対する自分の想いを静かに、
だが力強く語り続けて行ったという。
すると上層部は、その意外な態度に驚き、
そもそも、これといった確固たる根拠がなかったのもあって、
それ以上説き伏せる事はしなかったという。
それどころか、
熱く語る部下の気持ちに押され、最後には味方になってくれたという。
後日、その番組は何事もなく当初の予定通りの内容で放送された。
その翌日、クレームなどは一切なく、逆に賞賛の声が届いたという。
こういう話を聞くと本当にホッとする。
テレビの現場に、こういう志を持った人が一人でもいれば、
まだテレビの世界は大丈夫だと思う。
そして、こういう人に出会うと、この人のためにいい仕事をしようと、
こちらも襟を正すことになる。
踊る大捜査線の中に、
「上が優秀なら組織も悪くない」というセリフがある。
組織に属したことのない者にとっては、
時々、羨ましい場面に出くわし疎外感を感じる事もある。
上にいる偉い人は、志ある現場の人間をどうか守ってあげて欲しいと、
そばで見ているしかない立場の人間は、心から願う。
どうやら「気にしすぎ」というのが蔓延してるようだ。
少々古くて乱暴な考え方だが、
「どうだ、これ面白いだろう?」くらいの気持ちで作った方が、
テレビは、面白い番組になるんじゃないかと思っている。
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