マダム・フローレンス
ということで、今はマウイにいます。
ホノルルまでの機内で観たのが「マダム・フローレンス」。これが本当に良い映画でした。
クラシック好きなら、彼女のことは知っているでしょう。「世紀のオンチ」として知られ、金にあかせてカーネギーホールでリサイタルまで開いてしまったフローレンス・フォスター・ジェンキンス。
金持ちの勘違いしたオバサン、というのが衆目の見るところで、私もそうだったのですが、この映画ではメリル・ストリープとヒュー・グラントの名演技によって、彼女の姿が見事に昇華されます。
あの気難しいトスカニーニが金の無心に来るほどの地位と遺産を持っていたマダム・フローレンス。
幼いころから音楽教育を受けてソプラノ歌手となるが、音程もリズム感もなく、声域も狭くて、あるのは声量だけ。
つまり酷い音痴なのですが、本人はそれに気づかず、リサイタルやレコーディングを繰り返します。
夫には若い愛人がいるのですが、本当に愛しているのはさてどちらかというと、、
ヒュー・グラントは流石の演技で、「優しくて有能なヒモ」としての夫役を見事に演じます。
自分の音痴を気付かずにいたマダム・フローレンスは、ついにカーネギーホールでリサイタルを開こうとします。
周囲はそれとなく止めるように勧めるのですが、彼女は聞き入れません。そして当日、、
この映画には、とても多くのものが盛り込まれています。人々の差別意識、上っ面のポリティカル・コレクトネス、本当の優しさ、そして勇気。
彼女は死の床で、こう言います。
ひとは私のことを「歌えない歌手」だと言うけれど、少なくとも私は「歌った歌手」なのよ。
クラシック音楽好きの方も、そうでない方にも、強くお薦めしたい映画です。