ヒーローの原点

中世の吟遊詩人が生んだ伝説の義賊、ロビン・フッド。強きをくじき、弱きを助ける。あらゆるヒーローの原点ともいうべき彼の魅力は、過去７世紀にわたり、数多くの文学や映画を通じて語り継がれてきた。その輝かしい歴史に、いま新たな１ページが加わった。『グラディエーター』の巨匠リドリー・スコットが、同作でアカデミー賞に輝いたラッセル・クロウを主演に迎えて放つ『ロビン・フッド』。高潔な魂とたくましい肉体を併せ持つ闘いのカリスマ。まさに男の中の男であるロビン・フッドの知られざる肖像を、壮大なヴィジュアルにのせて描き上げた本作は、映画本来の熱い興奮と高い芸術性を堪能させてくれる本格派のスペクタクル大作だ。

男を磨く

時代は12世紀末。十字軍の兵士としてフランスで闘っていたロビンは、イングランドの騎士ロバート・ロクスリーの暗殺現場に遭遇。ロバートの遺言を聞き入れ、彼の父でノッティンガムの領主であるサー・ウォルターに剣を届ける役目を引き受ける。かくして訪れたノッティンガムの地で、ロバートの身代わりになってくれと頼まれるロビン。彼の素朴な人柄は領民たちの人気を集め、ロバートの未亡人マリアンとも次第に心が通いあっていくのだが……。その行く手には、イングランド侵略を目論むフランス軍との壮絶な闘いが待ち受けていた！

イングランドの王室にくすぶるお家騒動の火種。暗躍するフランスのスパイ。自治を求めて蜂起する北方の領主たち。史実を巧みに絡めながら進行する物語の中で明かされていく、ロビン・フッドの出生の秘密。二重三重のスリルに彩られたドラマは、愛と友情のエピソードもはらんで多彩に展開。最初は一介の射手兵にすぎなかったロビンが、ノッティンガムでの経験によって男を磨かれ、イングランド軍の要となるほどの真のリーダーに成長していく様を、ダイナミックに描き出していく。

稀代のビジュアリスト

そんなドラマの面白さをさらに盛り上げているのが、稀代のヴィジュアリストとして知られるリドリー・スコットが創り上げた迫力ある映像だ。とりわけ、映画の前半と後半に用意されたイングランド軍とフランス軍の戦闘シーンは、本作の大きな見どころ。城攻めを描く前半のシーンでは燃え上がる炎、海岸を舞台にした後半のシーンでは疾走する馬と水しぶきが、映画的な興奮をかきたてる。また、スコット監督ならではの青の色彩が際立つシャーウッドの森の場面は、絵画的な美しさに溢れ、過去のロビン・フッド映画とは一線を画す芸術性を感じさせる。

ロビンとマリアン

ロビンを演じるのは、これまで４作でスコット監督と組んでいるラッセル・クロウ。オスカーを受賞した『グラディエーター』で男も女も憧れるグラマラスなヒーロー像をクリエイトした彼は、今回もその才能を遺憾なく発揮。誠実さと温かさ、強いカリスマ性とセックスアピールを持つロビンを演じきり、観る者をおおいに魅了する。

対するヒロインのマリアンには、『アビエイター』でアカデミー助演女優賞を受賞したケイト・ブランシェットが扮する。戦場に出た夫の留守を守り通す気丈さと、中世のレディらしい気品を兼ね備えたマリアンは、『エリザベス』『エリザベス：ゴールデン・エイジ』のエリザベス女王を当たり役とするブランシェットにとっては十八番とも言える役柄。とくに、夫の死のショックから立ち直り、ロビンに惹かれていくマリアンの心模様を繊細にたどる演技は、多くの女性たちの共感を呼ぶだろう。

その他、マリアンの義父のサー・ウォルターに『ペレ』でオスカー候補になったマックス・フォン・シドー、イングランド王の顧問ウィリアム・マーシャルに『蜘蛛女のキス』のオスカー俳優ウィリアム・ハートと、脇を支えるキャストにも重厚な演技派が顔を並べている。また、ロビンの天敵となるフランスのスパイ、ゴドフリーの役どころで、スコット監督の『ワールド・オブ・ライズ』で注目されたマーク・ストロングが出演。彼の前作『シャーロック・ホームズ』に負けない悪役ぶりを披露している。さらに、英国史上最悪の王としてシェイクスピア劇の題材にもなっているジョン王には、『マリア』のオスカー・アイザックが扮し、劣等感と嫉妬の感情がにじみ出る名演技を見せてくれる。

スタッフも超一流のベテランぞろいだ。脚本は、クロウ主演の『L.A.コンフィデンシャル』でアカデミー賞の脚色賞を受賞し、『ミスティック・リバー』でも同賞の候補にあがったブライアン・ヘルゲランド。撮影監督は、『グラディエーター』と『オペラ座の怪人』でアカデミー賞候補にあがったジョン・マシソン。編集は、『ＪＦK』と『ブラックホーク・ダウン』でアカデミー賞を受賞したピエトロ・スカリア。美術は、『グラディエーター』と『アメリカン・ギャングスター』でアカデミー賞にノミネートされたアーサー・マックス。衣装デザインは、『グラディエーター』でアカデミー賞を受賞したジャンティ・イエーツ。音楽は、『アメリカン・ギャングスター』で英アカデミー賞にノミネートされたマーク・ストレイテンフェルドが手がけている。

帰還

12世紀末。イングランド王獅子心王リチャード１世（ダニー・ヒューズ）が率いる十字軍遠征隊の中に、ひとりの弓の名手がいた。彼の名は、ロビン・ロングストライド（ラッセル・クロウ）。バーンズデイル生まれの英国人でありながら、幼少時にフランスへ渡り、弓の腕ひとつで人生を切り開いてきた男だ。

いま、リチャード王の部隊に混ざってイングランドへの帰還の途に就いたロビンは、フランス軍と闘いを交えながら大陸縦断の旅を続けていた。そんな彼の運命を一変させる出来事が起きたのは、フランス軍との戦闘中にリチャード王が落命した直後のことだった。仲間と共に部隊を離れたロビンは、リチャード王の王冠をイングランドへ持ち帰る役目を担った騎士のロバート・ロクスリーが、フランスのスパイであるゴドフリー（マーク・ストロング）によって闇討ちされる現場に遭遇。瀕死のロバートから、ノッティンガムの領主である彼の父親に剣を届けてほしいと頼まれる。その遺言を聞き入れたロビンは、ロバートになりすましてロンドンへ渡る船に乗船。王冠をリチャード王の母のアリエノール（アイリーン・アトキンス）に届けたあと、男同士の約束を果たすべくノッティンガムへ向かった。

策略

獅子心王リチャードの死によって、イングランドの王室では弟のジョン（オスカー・アイザック）が新しく王座に就いた。さっそく暴君ぶりを発揮し、増税政策を推し進めようとする彼は、反対意見を唱えた摂政のウィリアム・マーシャル（ウィリアム・ハート）を解任。代わりに、幼なじみであるゴドフリーを後釜に据える。それは、フランス王フィリップの手先としてイングランドを内部崩壊させようとしているゴドフリーにとっては、まさしく望み通りの展開だった。内戦の誘発を目論むゴドフリーは、重税に不満をつのらせる北方の貴族たちに圧力をかけようとジョン王に提案。自ら陣頭指揮を執ると名乗り出た。

出会い

ノッティンガムに到着したロビンは、仲間のリトル・ジョン（ケヴィン・デュランド）、ウィル・スカーレット（スコット・グライムズ）、アラン・ア・デイル（アラン・ドイル）たちと村の入り口で別れると、ロバートの父のウォルターが住むペパー・ハロウを訪ねた。そこでは、ロバートの妻のマリアン（ケイト・ブランシェット）が10年にわたって夫の留守を守り、目の不自由なウォルター（マックス・フォン・シドー）に代わって領地を切り盛りしていた。彼女を使用人と間違えたロビンは、ぶしつけにロバートの死を知らせてしまうが、マリアンはショックを押し隠し、騎士の妻らしく気丈なふるまいを見せた。

いっぽう、ロビンの名前を聞いて驚きの反応を示したウォルターは、ロビンの出生の秘密を知っていることをほのめかしたうえで、ある提案をする。それは、このままロビンがロバートになりすましてノッティンガムに留まること。そうしないと、ウォルターの死後、後継ぎのない領地は国に没収され、マリアンは住む場所を失ってしまうからだ。

封印された幼少時代の記憶を取り戻したい一心で、ロビンはウォルターの提案を受け入れる。マリアンも義父ウォルターの思いやりをくんでしぶしぶ従うが、一介の傭兵にすぎないロビンを、とても夫の身代わりとみなすことはできなかった。

しかし、そんなマリアンの気持ちを変える出来事が起こる。凶作と悪代官（マシュー・マクファディン）の搾取に苦しむノッティンガムの村人たちの窮状を見かねたロビンが、３人の仲間と修道士のタック（マーク・アディ）の協力で、強欲な教会の馬車を襲撃。穀物の種を奪い、畑に蒔いてくれたのだ。そうしたロビンの誠実な行動に胸打たれたマリアンは、ロビンに対して心を開き、だんだんと彼を男性として意識するようになっていく。やがて村の広場で宴会が開かれたとき、手を取り合い、見つめ合いながら踊るロビンとマリアンは、どこから見ても仲睦まじい夫婦に見えた。

秘密

その頃、200人のフランス兵を引き連れて北上を開始したゴドフリーは、税金の取立ての名目でバーンズデイルを襲撃。さらに、リンカンからヨークへと攻撃の魔の手を広げていった。

そんなゴドフリーの企みに気づいたウィリアム・マーシャルは、「フランス軍がイングランド王の名で虐殺を行っている」とアリエノールに忠告し、ジョン王の目を覚まさせるように促がす。老獪なアリエノールは、ジョン王の愛人のイザベラ（レア・セドゥー）に伝達役を任せることでゴドフリーの裏切りをジョン王に信じさせた。

いっぽう、ゴドフリーに領地を奪われた北方の貴族たちは結束し、ジョン王に対して兵をあげる準備を開始した。その知らせがノッティンガムのウォルターの元にもたらされたのは、ちょうどロビンが過去の記憶を取り戻したときのことだった。

ウォルターに助けられながらロビンは思い出した。自分の父がバーンズデイルの石工であったこと。聡明で弁の立つ父が、万人の平等な権利を求める自由憲章を創案したがために処刑されてしまったことを……。ウォルターから、彼が自由憲章に署名した貴族のひとりであることを知らされたロビンは、「代理として貴族たちの会合に出席してほしい」というウォルターの頼みを聞き入れる。奇しくもその会合が開かれたのは、ロビンの生まれ故郷であるバーズンデイルだった。

結束

バーンズデイルでは、王に反旗を翻そうとする北方貴族たちと、一丸となってフランス軍と闘うべきだと主張するウィリアム・マーシャルとの話し合いが行われていた。そこにジョン王が現れ、貴族たちに挑発的な態度をとったことから、事態は一触即発の様相を呈する。

その空気を一変させたのは、ウォルターの代理として会合にやって来たロビンだった。「我々が求めているのは法に守られた自由だ」と、自由憲章の理念を説くロビン。彼の演説に貴族たちが心をひとつにしたのを察したジョンは、自由憲章の発行を約束。結果、貴族たちはイングランドの旗の下でフランス軍と闘うことに同意した。

最期

ロビンが旅立ってまもなく、ゴドフリーの一軍がノッティンガムに襲来。村人たちを恐怖と混乱に陥れた。タック、マリアン、そしてシャーウッドの森に隠れ住む孤児たちが果敢に応戦するなか、知らせを受けたロビンが北方貴族の部隊を引き連れて戻ったため、村の被害は最小限で食い止められた。しかし、ペパー・ハロウを襲ったゴドフリーの手によって、ウォルターは帰らぬ人になってしまう。

ウォルターを埋葬したのち、ロビンは再びジョン王の軍と合流するべく、ノッティンガムを後にした。旅立ちの時、マリアンと熱いキスを交わすロビン。それは、これまで自らのサバイバルのために闘ってきた彼が、愛する人のために闘うことを生まれて初めて意識した瞬間だった。

闘い

同じ頃、ドーバー海峡にはフランス軍の大艦隊の姿があった。内戦の混乱に乗じて、たやすくイングランドを攻略できるだろうとほくそ笑むフランス王フィリップ。だが、実際に彼が目にしたのは、海岸線を埋め尽くすイングランドの連合軍だった。その要となって実戦の指揮を執るロビンは、射手兵の部隊を高台に配備。上陸を開始したフランス軍めがけて矢の雨を降らせ、大きなダメージを与える。間髪をいれず、騎兵と共に海岸に躍り出ていくロビン。その行く手に、鎧兜を着けたひとりの騎士が現れた。ウォルターの仇をとるためにやって来たマリアンだ。彼女の毅然とした表情に決意の固さを見てとったロビンは、止める代わりに「攻撃に加われ」と命令。その言葉に背中を押されて闘いに加わったマリアンは、義父ウォルターを亡き者にしたゴドフリーめがけて馬で突っ込んでいく。果たしてその勝負の行方は？そして、ロビンは愛するマリアンを守りぬき、イングランドを勝利に導くことができるのか!?いま、８世紀の時を超えて語り継がれることになる伝説の闘いが幕を開ける！

キャスト

†ロビン・ロングストライド† ラッセル・クロウ
†マリアン† ケイト・ブランシェット
†ウィリアム・マーシャル† ウィリアム・ハート
†ゴドフリー† マーク・ストロング
†タック修道士† マーク・アディ
†ジョン王† オスカー・アイザック
†獅子心王リチャード１世† ダニー・ヒューストン
†アリエノール・ダキテーヌ† アイリーン・アトキンス
†リトル・ジョン† ケヴィン・デュランド
†ウィル・スカーレット† スコット・グライムズ
†アラン・ア・デイル† アラン・ドイル
†サー・ウォルター・ロクスリー† マックス・フォン・シドー

スタッフ

†監督・製作† リドリー・スコット
†脚本・原案† ブライアン・ヘルゲランド
†原案† イーサン・リーフ＆サイラス・ヴォリス
†製作† ブライアン・グレイザー、ラッセル・クロウ
†製作総指揮† チャールズ・J・D・シュリッセル、マイケル・コスティガン、ジム・ウィテカー、ライアン・カヴァナー
†撮影監督† ジョン・マシソン
†美術† アーサー・マックス
†編集† ピエトロ・スカリア
†衣装デザイン† ジャンティ・イエーツ
†音楽† マーク・ストレイテンフェルド

『ロビン・フッド』
12.10(金)ロードショー
robinhood-movie.jp
原題：Robin Hood／2010年／アメリカ映画／カラー／ドルビーSRD／
スコープサイズ／メーター数：3845ｍ／全8巻／上映時間：2時間20分／字幕翻訳：松浦美奈
オリジナルサウンドトラック：ランブリング・レコーズ／
ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント／ユニバーサル映画／配給：東宝東和
(c)2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.