今、とある「AIの解説書」がネットで話題になっている。
きっかけは、インスタグラムのフォロワー約8万人のバストPカップアイドル「Pちゃん」の熱烈な推薦であったが、その後、Amazonの「出版社からのコメント」に静かな波紋が広がった。そこにはこう書かれている。
先日、ある大手映像会社さんから「ぜひ映像化したい」と熱いオファーがありました。
「AIの解説書を映像化したい」とは一体どういうことだろうか。
Pちゃんおススメのこの本の正体は、『マルチナ、永遠のAI。--AIと仮想通貨時代をどう生きるか』。
ビジネス書風のサブタイトルであり、実際にAmazonでは「ビジネス・経済」に分類されている。
しかし、「映像化のオファー」の謎を解くカギはメインタイトルの「マルチナ」にあった。
この作品は、「マルチナ」という名の「超美人AI」を取り巻くヒューマンドラマ、すなわち「小説」なのである。
時代設定は、東京オリンピックの喧騒が去った2020年の秋。
主人公の岩科正真は、AIが実演調理をするロボティクスに客が流れたために実家の定食屋「キッチンいわしな」が潰れかかり、激しくAIを憎むも、打開策もなく、超美人AIマルチナに定食屋の再建を託すところから物語は始まる。
そんな正真は、美しく成長した幼なじみの姫野沙羅に恋心を抱くも、彼女の重大な秘密を知ってしまい、マルチナにも恋をしてしまう。
この「ヒトとAIの三角関係」という前代未聞のストーリー設定が「映像化のオファー」の理由と思いがちだが、本書を読むとそうとは言えないことに気付く。
所々、AIの基礎的な話は登場するが、そうした話は登場人物の日常的な会話や行動の一部になっており、かつ、その後起きる「事件」の伏線となっている。
結果、ビジネス色はまったくないのに、読み終えたらAIの基礎的な知識は身に付いているのが本書の大きな特徴だ。
ゲーム好きの人なら、今話題になっている『Detroit: Become Human』を思い浮かべるといいかもしれない。
本書のテーマは、「シンギュラリティは起きるのか」「政治は人がするべきか、AIがするべきか」など多岐にわたるが、陰謀に巻き込まれた正真やマルチナが最後に取る行動から垣間見える「AIと心」のシーンが最大の見せ所だろう。
実際に、「泣いた」というレビューもある。
つまるところ、壮大なストーリーでありながら、SFではなく、わずか2年後にはほぼ確実に我々の身の回りで起こることが正確無比に緻密に描かれているのが「映像化のオファー」の最大の理由なのかもしれない。
もっとも、現在確認が取れているのはあくまでも「オファー」であって、本記事執筆時点では映像化が決まっているわけではないことを付しておく。
■大村 あつし
日本の小説家、ITライター。静岡県富士市出身。静岡県立富士高等学校卒業、静岡大学人文学部経済学科卒業。Microsoft Officeのコミュニティサイト「moug net」と、IT資格の「VBAエキスパート」の創設者。
Excel VBAの解説書の総売上は130万部にのぼる。過去にはAmazonのVBA部門で1~3位を独占。同時に上位14冊中9冊を占め、「今後、永遠に破られない記録」と称されて、IT情報番組の司会に抜擢される。
2007年には小説家に転身し、処女小説『エブリ リトル シング』が20万部のベストセラーとなる。2008年(主演、井上和香)、2009年(主演、内山理名)と2回舞台化され、15の国と地域で翻訳出版される
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