ミラクルペイント
丁度三年前の、一区切りとなったあのGEISAI#20最終日に僕等は出逢った。
その日の彼女は自身の真っ白なワンピースいっぱいに手描きでセルフペインティングをしており、しかも(確か)裸足だった。
滑らかなその素足にもところどころに鮮やかな絵の具が飛散し、時間と共に経過したそれは薄い膜を張っていたと思う。
数多くある出展者の内、彼女の容姿が美しかったのも、僕の足を止めた一因になったことは否定しない。
美しい被写体は僕の為にも、読者の為にもなるのだから。
それから三年が経ち、今や『ゲスの極み乙女。』等人気ミュージシャンのアートワークを手がけ、タイアップのプロダクトはおろか、彼女自身のオリジナル作品さえ店頭に並ぶようになった現在。
ファンは彼女の作風と世界観を愛し、もはや彼女自身がブランドになりつつある今もなお、そのオーラとスタンスは何も変わってはいなかった。
馴染みのカフェのテーブルを挟み、自身の作品を愛おしそうに手にしては、にへらっと笑う彼女はあの日の“恋する絵描き”のままだ。