ミスiD2017
その日はスタジオ
新曲を持って行った
メンバーに新曲を聴かせる時はいつもとても緊張する
その日皆に聴いてもらったのはセフレをテーマにした曲だった
学生の頃、知人っぽい人(♀)から「どいはいつもありえない歌ばかり作る」と言われたことがある
その知人っぽい人は、世間的に見ても私から見ても、とてもちゃんとした方だった
そしてそんな彼女は、そんなにまっとうではない私のことがそんなに好きじゃなかったんだと思う
よく長文のメールがきて、私や、私の曲の嫌いなところが細かく何通も何通もに渡って送られてきた
無視をしても、それはやむこともなく
思えば熱烈なファンレターに近いものだったのかもしれない
しかし当時はただ返事のしようのないメールに困惑し、連絡先を変更するついでに、思い切って長く使ったガラケーからiPhoneに機種変をした
それ以来、私は彼女の詳しい行方は知らない
私はその人のこと、今も昔も決して嫌いじゃなかった
でも、私の作る曲の世界がどうしても、彼女は許せなかったんだと思う
あの人が、もし私がメンバーに聴かせたあの新曲を聴いたら「また懲りずにこんな曲を作って…」と長文のメールをくれるのだろうか
「セフレ」という言葉は、私が中学生とかそれよりもっと前に爆流行りした言葉のように思える
もちろん今でもその文化は存在して、過激な言葉故に日常生活、日の当たるような場所では語られることのないワードかもしれない
しかし、20代突入した辺りからだろうか
女性誌の悩み相談コーナー的なものをみても、周囲の女性が持つ悩みにも「好きな人とのセフレの関係をやめたい」という悩みを抱えた女性が非常に多く存在することを知った
そしてその悩みが複数存在するということは、確かに傷を負ってる人がいるのだ
その傷は公に言えない悩みであればある程、深いものなのかもしれない
私は、自分のわからないことであっても「ありえない」の五文字で完結させたくないと思っている
彼女が「ありえない」といったこと数々の私の歌は、私や誰かにとっての日常だった
新曲が出来ると、決まっていつも彼女のことを思い出し、なんともいえない懐かしい気持ちでいっぱいになる
その翌日の金曜日
私はミスiD2017に応募した
もともとミスiDのファンだった私は、いつもミスiDの様子を楽しく応援したり、ミスiDを通してそれまで知らなかった魅力的な女性を知って、幸せな気分に浸ったりしていた
ミスiD2017の応募が始まった頃、私達Su凸ko D凹koiは絶賛REC期間真っ只中だった
RECの休憩中、よーし!ミスiDにすっとこ皆で応募してみようよ!という話しになった
それはもう、きゃっきゃきゃっきゃと盛り上がった
一番先に応募を完了したのは、おうむだった
私はというと、一旦家に帰り応募の項目を埋めたり、応募用の写真を用意するために大量の自分の写真をみているうちに、自分なんかが応募して本当にいいのだろうか?といったような不安の波に飲まれていた
現実逃避で、アイアンマンもみた
そんな生活の中、
私はコンビニバイトもしていた
すると機嫌が悪いとカゴを蹴飛ばしたり、店の中怒鳴り散らしたりする50代後半から60代くらいの常連客のおじいさんに「女は18越えたら終わりだ」と言われ、顔を見てため息をつかれた
その時も例のごとく機嫌が悪かったのかもしれない
私は「ハハッ」と渇いた愛想笑いをした
弱い人間だ
肯定でも、否定でもない
ただとっさにトラブルの種を避けた
思考を持つことは自由だと思っている
しかし自分と違った思考を、無理矢理押し付けられた日にはどうだろうか
これぞまさに交流事故である
そしてまた、そういうのはどうしたって未然に防ぐのはとても難しい
そのおじいさんが18越えたら女は終わり、という考えを心の中でひっそり持ってる分には私はかまわない
しかし、それをイチイチ2017年というこの現代でわざわざ18越えた私に言う意味はなんなんだ?
人の人生を勝手に終了させないで欲しい
私が18より前は、とにかく苦しかった記憶しかない
その当時も今も「若さって素晴らしい!」的な思考がとても苦手だった
若さは確かに素晴らしいのかもしれない
でもまだ何者にもなれていない、カラッポな自分が嫌で嫌で仕方がなくて
若さを持っていた時、私は若さの楽しみ方がわかっていなかった
ただただ早く、歳をとりたかった
歳をとって、いいことも悪いことも若さで片付けられない、どこか遠い違う場所へ行きたかった
歳を重ねることは尊い
男性でも女性でも歳を重ね、ずっと生きてきた人はなんて強いんだろう
私が一番かなしいのは、いまだに「若さ」を人に押し付ける人がいることと、そのせいで「若さ」より素晴らしいものをもっている美しい人が元気をなくすことだった
例えば映画をみるときに、何歳の人間がこの映画を作ったかなんてことはさほど重要ではないし、ただ若い人間が作ったということだけが素晴らしい映画なら、いつか廃れてしまう
それは本でも、音楽でも、娯楽全般なんでも言えることだと思う
あの時、あのおじいさんに何も言い返せなかった自分を封印しようと思ったのが、今からだともう大昔の金曜日のこと
時間はまた流れ、ただひたすら「ニック 画像」で検索する土曜日
このニックがなんなのか、気になった人はとにかくググって下さい
検索エンジンがヤフーな人はヤフって下さい
ちなみに私の実家はgooです
そしてあと数分で新しい日曜日
憂鬱にコメカミを狙われているような気がして、私は毛玉だらけのスウェットで目を閉じる
目が覚めたら、また
【次回ライブ】
5/21 武蔵野音楽祭
(※吉祥寺サーキットイベント)