千葉は島だったのか。その7
冒険は唐突に始まる。
何かで読んだ気がした。
中学校での「朝の挨拶運動」が終わって思い立つ。今日、走れんじゃね?と。
急いで用意していると、ちようど学校に向かおうとする長女とリビングで会った。
一緒に車で駅まで行く?って聞くと目だけで曖昧に頷く。
そう言えば今日のスタートは長女の学校の近くだった事を思い出して、やっぱ我孫子まで一緒に行こうかって言い直すと、
良いんだか嫌なんだか分からない、やっぱり曖昧な返事。
とりあえず西船橋で武蔵野線に乗り換える時に、スゴく良い匂いのするクロワッサンを二人分買おうと決める。
「娘の分とは別に包んで下さい」ってお店の人に言うと、なんだかとてもオトウサンの様な気がした。
電車の中では、別に話すこともなく、俺はいよいよクライマックスに突入する三國志を、長女はゲームを、それぞれ勝手に始める。
それでも何年かぶりの二人っきりの状況はくすぐったい感じがして、あんまり嫌じゃなかった。
我孫子で長女は茨城に、俺は成田に向かう電車に乗り換える。
先に出発した長女の乗る電車は、左にそれて大きな空に吸い込まれるように消えていった。
俺はその電車を目で追いながら、やっぱりオトウサンの気持ちになっていた。
安食って不思議な名前の駅が今日のスタートだった。
ランニングでは超先輩の丸山さんに教わった、気持ち良く走る方法を実践する。
気持ち良く走って歩いた1時間半。
千葉の最北端から最東端までユルユルと進む。
相変わらず左側には利根川がユルユルと流れて茨城と千葉を分断している。
ゴールの「海まで55km」地点でクロワッサンを食べた。
同じ空の下で、娘と同じものを食べてるかと思うと、
やっぱりくすぐったい感じがしたけど、やっぱり嫌じゃなかった。
滑川って駅から地元の駅まで1110円。
料金の高さに、結構遠くまで来たなって実感した。