脱スランプ2
その約10年前の、一番良かった頃の感覚を思い出すきっかけは、今年4月の試合中でした。
身体が全然動かずに、相手のパンチをたくさん喰ってしまったんだけど…何でだろう?
本当にどうしてなのかは全く分からないんだけど、パンチを喰いながら、急にその昔の感覚が思い出されて、
「これって昔の良かったときの感覚だな。なんで今?」
なんて思ったのを覚えています。
久しぶりの感覚に懐かしさを覚えながら、でも不思議とその感覚に違和感はなく、
この感覚に従って動けば、コイツのパンチなんか一発も貰わねーのになって、そう思ったけど、
それを体現出来るような練習をしてきていなかったから、やればいいことは分かっているのに身体は動かず、もどかしい気持ちで相手のパンチを喰い続け、こりゃこの感覚に従ってまた練習積んで出直しだな、なんて思いましたね。
とは言っても、決して途中で試合を投げた訳ではなく、何て言うか、
普通はあれだけ上手く行かない試合の最中だと、経験上、心に生まれるのは焦りか失望か開き直りなんだけど、
あのときは、そんな状況の中で次への希望が出てきたという、初めての不思議な気持ちでした。
まぁあの試合の前はちょっと色々あって、まともな練習がなかなか出来ず、
そんな中で勝つには一発に賭けるしかないと、
あろうことか、自分がこれまでに積み上げてきた戦い方とは正反対の、
マイク・タイソンの映像を沢山見て、そんなイメージで試合に臨んでみたものの、
映像を見たからって急に出来るようになるハズもなく、
身体が動かない上に何をやっていいのか分からなくなってしまったという、迷走ここに極まれりな状態だったから、「負けに不思議の負けなし」の言葉通りの当然の敗北で、
でも、試合中に突如として甦った感覚に従って練習を重ねて行けば、もしかしたら昔のような動きがまた出来るんじゃないか?という期待、希望が自分の中に生まれて、
あれだけの惨敗を喫した直後から、気持ちは凄く前向きだった。
負ける度に「もう限界かな、やめようかな…」なんて思っていた去年一昨年とは大違いでね。
そして、その感覚に従って練習を重ねて行き、
「コレだよコレ!昔はこんなんだった!うぉー郷ちゃん帰ってきたぜ!」
という、半ば諦めていた、本当に奇跡と言ってもいいような、実に8年半ぶりの感覚の復活劇が、7月に入ってから遂に起こったのでした。(つづく)