千葉は島だったのか。その15
前回のチャレンジから、ほぼ一ヶ月。
走れないんじゃなくて、
いちいち言い訳して走らない自分に腹が立った。
その日は昼からPTA関係の会議が津田沼で1件。
14時から16時まで船橋の幼稚園で短期空手教室があって、
17時から21時まで幕張のスポーツクラブで空手とキックの指導ってヒドく慌しい日だった。
あえてその日に走ることにする俺は、やっぱり馬鹿だと思う。
でも、そんなトコロが割と好きだったりもする。
朝の3時に起きて前回終了地点の片貝海岸へ向かった。
まだ真っ暗な京葉道路から東金有料を経て、九十九里有料道路。
そんなにトバしたわけじゃないのに僅か1時間足らずで着いてしまった。
車を降りて、夜と朝の境目にある砂浜に出て海を眺めた。
見たことも無いような色した空は神様でも光臨しそうな雰囲気。
「もうすぐですね」ってタトゥーだらけのサーフボードを持った若者が親しげに話しかけてきた。
それが夜明けの事だって理解するのに数秒かかったけど、その見てくれじゃ判断できなかった豊かな感受性を持つサーファーと一緒に夜明けを待つ。
ポッコリと顔を出した朝日が辺りをオレンジ色に染める頃、
僕は、明るくなってドレッドヘアーに鼻ピアスっていでたちがハッキリと確認できた心豊かなサーファーに別れを告げてスタートする。
日の出を背にしてひたすら波打ち際を走った。
ふと振り返ると、なぁんにもない砂浜に僕の足跡だけが続いていた。
空っぽの僕の心に「はじめ人間ギャートルズ」のエンディングがリフレインし始めた。
何にも無い、何にも無い、全く何にも無い♪
生まれた、生まれた、何が生まれた♪
星が一つ、暗い宇宙に生まれた♪
星には夜があり、そして朝が訪れた♪
約20km。
70km近い九十九里海岸の終わりが見えてきた一宮まで走って、
千葉の片側がずっと海だったことを確認する。
まだお昼前。
羊みたいな雲がポコポコっと浮いた空の下にある津田沼で行われる会議に向う。
はじめ人間ギャートルズのエンディングを口ずさみながら、
僕は車を走らせた。