遥かなるカナリア。
パリ、そしてマドリッドで乗り換えた3台目の飛行機の窓から
青い海にポッカリと浮かぶカナリアが見えてきた。
成田を出て26時間。
仕事を始める前からクタクタに萎びれた身体に鞭打って計量会場へと向かう。
スペイン人DJの陽気な仕切りで、
遅れて始まった割りには予定より早く終了。
少しだけ余った時間ビーチに行った。
異国に住んでいる、尊敬する友人との約束を守るために。
僕らの世代にとって永遠のアイドル、
大瀧詠一さんが昨年末に亡くなった。
僕らが夢中になって彼の歌を聴いていたのが、
もう20年ほど前の話。
懐かしいと思える時間が経過していたことが、
そんな歳になったのだと、寂しくもあった。
もう夜に近い夕方。
人通りも疎らなビーチに向かったベンチに座って
「カナリア諸島にて」を聴く。
透明な歌声とリズムは、
それが30年以上も前の楽曲だとは思えないくらい新鮮に聞こえた。
当時、この曲を聞いてカナリア諸島ってどんなところなんだろう、って想像した。
目の前の大西洋は、静かに波を繰り返していて
それが何となく、イメージ通りであっただろうなって思った。