幸せ配達人
早朝、目が覚めた。
キャンプ場はまだ薄暗くて、鳥のさえずりが始まったばかり。
いつのまにか寝てしまった僕は、急に思い立って身体を起こした。
カズを探さなきゃ。
テントの中には子どもたちが折り重なるように寝ているけど、カズの姿は見当たらない。
焦る、僕。
最後にそこしかないって、マイクロバスのトランクをあけると、
身体を丸めてスヤスヤと眠るカズがいて、僕は身体中の力が抜ける位ホッとした。
満足そうに眠るカズはとても幸せそうで、
しばらく僕は、彼の寝顔を見ていることにした。
幸せって感じる尺度には個人差があると思う。
お金を儲けたとき、
恋に落ちたとき、
でも、カズの笑顔にはそれを向けられた人全てを幸せにする力がある。
それは、彼の四肢が不自由だからかもしれない。
言葉で気持ちを伝えるのが得意で無いからかもしれない。
だから僕は、
誰に何と言われようとも、
僕の幸せのために、
カズを笑顔にしたいと思ってる。