オランダ通信 その3
会見が終わって、暇をもてあます僕はレーワルデンの街を走る事にした。
ホテルから街を目指して1kmほど人通りのあまり無い道を走ると、
広い運河と街中を流れる小さな運河の交差点。
いかにもヨーロッパって感じの可愛いらしい舟がたくさん浮かぶ小さい方の運河に沿って走ると、
今度は公園の中にレンガで出来た微妙に曲がっている教会を見つけた。
脇を走り抜けると、その先には尖った屋根の大きな教会が見える。
そこを目指して綺麗な石畳の道を気持ち良く走ると、
間近に見るその教会は暮れる街に溶け込んで、色の無いシルエットは泪が出るほど美しかった。
今度は少しだけ広い通りを、なんとなく元来た方向に走る。
カチカチと大きな音をたてる信号機があって、
そういえば走り始めて最初の信号機だった事に気がついた。
交差点では車の流れが日本とは逆で、通りを渡るタイミングがなかなか掴めなかったけど
ヨーロッパのドライバーはマナーも成熟していて皆優しい。
まだ5時を過ぎたばかりだと言うのに、この古くて信号機の無い街は薄暗くなり始めた。
一周したのだろう。さっき別れた大きな運河を見つけた。
もう真っ暗になってしまった街の外れに宇宙船のようにぽっかりと浮かんたスーパーマーケットに誘われるように入る。
チーズとミネラルウォーター、そしてビールを多量に買い込む。
最後の1kmを大きな荷物を抱えて、今度は腕力も駆使しながらホテルへと戻った。
明日のイベントの成功を祈り、素敵な街に出会えた事に感謝して一人でビールを飲む。
翌日同じコースを、今度は明けつつある朝方に走った。
朝日が差し込む明るいパステルカラーの教会は、昨日のモノトーンの美しいさとは違って気持ちが軽くなる。
そして僕は今日のイベントは間違い無く成功する、と確信した。