千葉は島だったのか。その12
始発の時間に合わせて起きると、外は豪雨。
やっぱり行こう、そうアタマが思ったのか1時間後に目覚める。
いつの間にか雨は上がっていた。
醤油の匂いがしたり畑を渡る風が薫る銚子電鉄で今日のスタート外川駅の一つ手前で降りた。
犬吠って書かれたその駅は、まだ誰もいなくて真っ暗。
この駅の先に見えた大きな金色の屋根が何なのか確かめたかったから、駅を降りてズンズン歩く。
意外に近く5分ほどで朝から唸るような念仏がスピーカーから流れるお寺に到着。
鮮やかな朱色の山門や朝日を受けてギラギラと輝く塔は、
なんだかノンビリした銚子の漁村とミスマッチで坂道を転げ落ちるように興味を失った。
ちょっとだけ申し訳なくて、お寺の横にある急な坂道を贖罪の気持ちで登る。
地球が丸く見える丘ってところまで登ると海が見渡せた。
残念ながらもやがかかっていて水平線は見えなかったけど、
やっぱり海は広いな、大きいな、って思った。
今日は11時までに屏風ヶ浦を越えて飯岡まで行こうと決めていた。
だからその先は海岸に沿って走る、走る。
お母さんが船の帰りを待つ港を越えて、
ニョッキリと海から生えたような奇妙な形をした岩を越えて、
環境は最高だろうけど通学が大変だろうなって茶色い大学を越えると屏風ヶ浦だった。
衛星写真で見ると屏風ヶ浦の侵食を防ぐためにぐるりと防波堤がある。
ここを行けば約10km、ほぼ直線で飯岡まで行けるハズ。
今9時45分だから予定通り11時までに行かれるだろう。
前の日に、波が洗う防波堤の写真を見ていた長男がまじめに心配していた。
ゴチャゴチャと、波にさらわれたら泳ぎのうまくないことを知っている俺の捜索だか葬式だかが大変だ、なんて言っていた。
目の前の防波堤にはちゃんと立ち入り禁止って書いてあって、やっぱり防波堤は波に洗われている。
長男の優しさが身に沁みたって理由で、怖気づいた自分の気持ちを隠して屏風ヶ浦の上を走るドーバーラインを走る。
ヒタスラ走って30分遅れで飯岡灯台到着。
眼下には、これから進むべき九十九里浜がヒタスラ続く。
ちょっとだけため息を漏らした後、
海の見える定食屋さんで待っていた生ビールは天国の味がした。