ギリシャ紀行 その3
坂の途中にあった博物館に寄った。
地下が現在進行形の遺跡発掘現場で、それが見える造りになっている。
2階にあったカフェからアクロポリスが夕日に染まって見えた。
スイマセン1本だけ。
ギリシャビールでシアワセな景色に乾杯。
館内はズラズラと石造が並んでいて、なんだかとても荘厳な雰囲気だった。
カラフルなランニングスタイルの僕はとても浮いていたけど、一番上まで堂々と行く。
ビデオで、どこかの国に持ち出された石造がどこの部分かを上映していた。
ビールで少々気の大きくなっていた僕は「返せ、コノヤロー」と、
静かな館内で小さな声で呟く。
外に出ると、ヨレヨレの服を着たおじいさんが寄ってくる。
「お前はチャイニーズか?」
「いや、日本人だ。」
「そうか、じゃぁそこのカフェでお茶を飲もう」
「は?」
唐突な展開にうまく事情が飲み込めない。
するとそのおじいさんは僕の手を取りながら、訛りの強い英語で
「俺の息子は日本に住んでいたときがあったんじゃ(多分)。だから日本の人にお礼をしたいんじゃ(多分)」
ギリシャの人はとても日本が好き、って聞いた。
断るのがとても忍びなかったけど会議の時間が近づいている。
「申し訳ない。仕事なんだ」
そう言うと、おじいさんはとても哀しそうな顔をして
「じゃ、また今度一緒にお茶でも飲もう」
といって、またヨロヨロと立ち去って行った。
なんだかとても悪いことをしてしまった気がして
その先でギターを弾いていた若者のギターケースに、
ポケットに入っていたコインを全部つかみ出して入れた。