歯磨き粉と洗顔フォームと、長男。
一日の終わりに入るお風呂。
熱いお湯に浸かりながら、お気に入りの本を読む至福の時間。
そろそろ出ようかなって時に歯を磨くことにしている。
ニュウってチューブから歯磨き粉を捻り出して歯ブラシに乗せると、一気に口にくわえた。
口一杯に広がる清涼感、
じゃなくて、モノスゴい違和感。
おえっ!洗顔フォームじゃねぇか!
最近、色気づいた長男が置きっぱなしにしていた歯磨き粉そっくりの洗顔フォーム。
喉元まで怒りがせり上がる。
でもね、昨日長男と一緒に5キロほどランニングしたんです。
最後の500メートル、競争しようって俺はもちかけた。
うん、って応えた小学校から高校3年までミッチリとバスケットをやった長男は、一気に加速すると一度も追いつけないでゴール。
遠ざかる長男はカモシカみたいに遠く、早く、なんだかとても頼もしく思えた。
その後、地元の消防団のパトロールが終わった後に長男へメールをした。
「また走ろうな」って。
そしたら「うん」って返信があった。
子どもの頃からずっと父親と折り合いの悪い俺の、
突然変異みたいな優しい子どもに、
可愛いなって思った事、思い出す。
喉もとの怒りは口の中の違和感と一緒に吐き出して、もう一度湯船に身体を横たえた。