北海道神宮を通過し、ライト側のフィールドと三塁側のスタンドがちょっと見える。
この瞬間に緊張感が一気に高まる。
バスが正面に近づく。
1回戦、2回戦と勝ち上がっている。
今日も負けたら終わりの戦い。
先に行われている、全校応援の歓声とブラスバンドのマーチ。
コンクリートの上をカチャカチャと歩くスパイクの音。
深緑と白い雲と蝉の声。
歓声と溜め息が混じり、先の試合終了を告げるサイレン。
スイッチが入る…。
“よし、俺たちの出番だ。”
二十数年前の光景がフラッシュバックし緊張感に包まれる。
ここは道産子球児が目指す場所。
甲子園への扉がある場所。
夢が現実になる場所。
そんな事を思うとあの日の気温、音、匂いが甦り鼓動が速くなる。
円山球場。
マウンドは低め、左中間右中間は近い。
フェンスは低い。
ホームランは気を付けないといけない。
後ろは動物園…
色々思い出す。
この世界に入ってから訪れるのは三度目。
打席に立たないのは今回が初めて。
猛暑の関東を抜け出し、爽やかな暑さの北海道へ。
ここの場所に来ると緊張と闘争心と敗戦の悔しさ、勝利の達成感が湧いてくる。
思い出しただけで心が動く。
今も昔も最後まで諦めない全力プレー。
この日は良い日になった。
夕陽に照らされ静寂に戻った北の球場は、次の歴史と記憶を作り上げる。