チェチェン紀行 その1
チェチェン共和国。
あまりニュースを見ない俺だって聞いたことがある国名だ。
それも良い方じゃなくて反対の・・・
空港へと向かう京成線の小さな駅に向かう。
いつも通る道なのに、ふと小さな神社が目についた。
「神仏を尊んで恃まず」たしか宮本武蔵がそんな事言ってた気がする。
お寺や神社に行くのは好きだけど、自分の事はお願いしない。
そんなちっぽけな事が自慢だったのに
遠征の安全祈願をして行こう
唐突にそんな気になった。
財布にあった小銭を全部出して、まとめて賽銭箱へ放り込む。
ガランガランと、思ったより濁った音を立てる大きな鈴を鳴らして手を合わせた。
やっぱり止めよう。
唐突に、そう思った。
せっかくだから後2年後にせまる次男の合格祈願だけをする。間が開きすぎて神様が忘れなきゃ良いなって思いながら。
昼に日本を出て10時間近いフライトの後、同日の夕方にモスクワに到着。
なんとなく得した気分も、トランジットで宿泊するホテルに向かう、僅か20km足らずの距離を永遠と続く渋滞でペシャンコになった。
この渋滞に掛かる経済損失ってどうよ、なんてガラにも無く毒づくけど、
1ヶ月ぶりのモスクワは春を通り越していきなり夏になっていた。
既に夜10時も過ぎようとしているのに、まだ外は明るくて蒸し暑い。
既にクタクタの俺は、いつの間にか寝入ってしまって翌日は朝5時に目が覚めた。
いつも通りランニングシューズに履き替えてホテルの外に出る。
目指すはあの、とんがり帽子を被った教会にしよう。
2つほど目に入った教会を、軽いランニングで廻る。
安全祈願をしようかな、って頭のカタスミで思ったけど
やっぱり止めた。
次男の合格祈願も、遠すぎるだろと思って止める。
寝不足なのか時差ぼけなのか分からないけど、妙にスッキリしない頭を振りながら走り続けた。
人も車も多くなってきて、少しずつ目覚めてきた街を後にホテルに戻る。
調子の悪いシャワーを浴びて、モリモリとバイキングの朝食を食べ終わる頃、
さぁ、行くか!
ようやくそんな気になった。