チェチェン紀行 その2
宗教や個人の自由が保障された(概ね、という意味で)、
四方を海に囲まれ(それ故に起こっている問題はあるが)、
ピストルを持たなくても安全に過ごせる、
国としての主権が国際的に確立されている日本。
そんな国で育った俺が、今立つこの地は
イスラム教を国是とし、
街のそこかしこに自動小銃を構えた兵士が立ち並び、
つい十年ほど前に大統領が暗殺された国。
どんなに違うのか、肌で感じたいと思った。
空港に迎えに来てくれた関係者は、警察官の先導する車でホテルに向かう。
周りの車は、おそらくロシア製なのだろう。
あまり洗練されてるとは言いがたいデザインに、概ね地味な色をしていた。
そんな中を、俺たちの乗った黒塗りのレクサスやベンツが、
時速180kmで専用レーンを走る。
何人たりとも先には行かせねぇ、
そんな感じで空港からホテルまでものの10分ほどで到着した。
俺は部屋へ入りTVのスイッチを入れる。
画面には
昭和を感じさせるオザキキヨヒコみたいな人と
派手に着飾ったオバちゃんが観衆の中激論を交わしていた。
言葉は全く分からないけど、どうやら女性のファッションを議論しているらしい。
チャンネルを切り替えると、若い女性が数人、とても短いスカートで踊っている。
少し拍子抜けした感じがしてTVを消す。
とりあえず街中でも走ろう。
ホテルの敷地の外へ出る門には厳重に鍵がかかっていて、
恐ろしい顔をしたセキュリティがジロリと俺を睨んだ。
ここから出ちゃダメだよ、って感じで。