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父娘物語 その6

磯根崎を、たった今走ってきたばかりの方向に折り返す。

今度は海岸線と隣接する崖の上を走っているハズの、幻の道を探して。

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その入口は、

「謎のループ橋」

ネットではそう呼ばれている。

森の手前にその古い橋はあった。

怪しげな雰囲気がプンプンと漂う、森の奥へと続く草に埋もれた道のスタート。

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始めのうちは、とりあえず道らしき痕跡に沿って進む。

が、

しばらく行くとその跡は徐々に細くなり、倒木が行く手を阻んだ。 

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 いよいよ道は消える。

後ろから娘が叫んだ。

「オイ、どこ行くんだ!オレ、女子高生だって言っただろ!」

もう何が目的なのか良く分からない(笑)

ただ、引き返すのだけは嫌だった。

もはや道とは呼べない、僅かな踏み後を辿って前に進む。

顔中に蜘蛛の巣が張り付き、

頭をそれから守って被っていたフードの中は汗ビッショリだった。

IMG_8734

俺の背中を見とけ、そんな事を思っていた気がする(笑)

ガシガシと蜘蛛の巣を払い、モクモクと前進する。 

不意に道は開けた。

後ろからついて来る娘と顔を見合わせると、

突然、弾けるように笑い出した。

これぞ女子高生って嬌声で。

「キャハハ!オヤっさん、蜘蛛の巣だらけだよ。しかも汗だく(笑)」

なんとも無邪気な笑い声が、人の気配の無い野原に響いて青空に吸い込まれていく。

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 そこはさっき通った海岸線沿いの崖の上。

以前はパラグライダーの出発地点だったらしい。

ここから飛んでいたのか。

スゲェなぁ。

なんて思っていたら

いつの間にか隣に佇んでいた娘が、

「スゲェなぁ」って呟いた。

大したことじゃないけど、

なんか嬉しい。

IMG_8781

更に山の中の小路を歩き続ける。

娘は、疲れてきたのか何も喋らない。

二人だけの

ザクザクと落ち葉を踏みしめる足音と、

荒い呼吸音だけが、誰もいない森にこだまする。

なんとなく、

嬉しい。

不意に木々の切れ間から東京湾観音の後姿が見えた。

あぁ、ありがたい。

2万5千分の1の地図に残る不思議な道路。

等高線の間隔は詰り、勾配が急であることを告げているのに

その道は麓から、大きな観音様が立つ山頂まで一直線に描かれている。

国土地理院から道として認められているのに、そんな急な道って。

いつか、そこを通りたかったんだ。

娘にはナイショだけど。

IMG_8796

最後は急な崖を這いずり上がる。

国土地理院は正しかった(笑)

ようやく山頂手前の駐車場の脇に出る。

やっぱり、

俺らは顔を見合わせる。

娘は、今度は笑わずに

かなり満足そうな顔で頷いてから呟く。

「ハンパねぇアドベンチャーだな、おい」

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大成敦
ファイティングスポーツクラブ大誠塾所属
1967年10月3日生まれ
大阪府出身
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