次女が出かける前日に仔猫を拾ってきた。

まだ目も開いていない、手のひらに乗っちゃうくらい小さな仔猫が4匹。

もう子どもたちは大騒ぎだ。

俺がミルクをやる！

ダメ、そんなあげ方じゃ。

私が抱く！

バカ、つぶれちゃうだろ。もっと優しく抱けよ。

いつの間にか兄弟4人揃って

おまえら、普段そんなに仲良かったかってくらい喧しい。

いつ以来だろう、そんな光景は。

いつも、小さかった子どもたちが小さな食卓を囲んでワイワイと騒いでいたな。

懐かしくて、微笑ましくて、嬉しくなった。

結局、最終的に俺の部屋が一番安全だろうって事で

2時に起きなきゃいけないのに、日付が変る頃に大きな籠ごと置き去られる。

夢の中まで追いかけてくるような、

エンドレスかと思われた仔猫たちのミーミーと糸のように細い鳴き声は、

眠ったのか急にパタリと止まった。

今度はその静寂が気になって眠れない。

子ども達の努力でその日のうちに3匹は行き先が決まった。

我が家に残ることになった

なんだか生命力の薄そうな、赤っ鼻のいつもポカンと口を開けたシマシマの仔猫を抱き上げてみる。

メンドクサそうに鼻だけをピクピクと動かした仔猫を見て、生きていることを確認した。



結局30分位、ウトウトしただけで目覚ましが鳴る。

すぐに走り出せるような格好に着替えて娘を起こした。

目覚めの良い次女は、あっさりと起きて車に乗り込む。

まだ仔猫と戯れた興奮が醒めないのか、

それとも、

狭い車の中で2人っきりの空気が微妙になるのを恐れてか、

1時間ほど高速を走り続ける間、

娘は後ろの席から、大好きな歌手や部活の話を饒舌に喋り続ける。

さすがに、インターを降りて古くからある街道を通り、

九十九折の急な坂道を下って房総半島を横断する頃には

運転席の後ろから軽い寝息が聞こえてきた。

起こさないようにラジオのボリュームを下げると、

フロントガラスを叩く雨の音が微かに聞こえる。

予報では晴れるはずだったのに、

スイッチを入れると、ギコギコと動くワイパーを見ながら恨めしく思った。