突然、次女がそんな事を言い出したのは意外だった。

本当に。



長女は現在、女の子の誰もが罹る「親父キライ病」真っ只中。

一緒の空間にいることさえ嫌らしい。

でも一番先に生まれただけあって、それをもって有り余るくらいの思い出がある。

2番目に生まれた長男。

俺とは全く違う、何時でも誰に対しても優しい性格は親父とモメる事なんか無い。

4番目に生まれた次男は、俺に時間が出来たこともあって

よく一緒にラグビーをしたり、その友達を連れて遊びに行ったりする。

そして、3番目に生まれた次女。

ちょうど新規事業に失敗した頃。

朝も昼も、そして夜も働いた。

彼女の生まれ育ったのは、ちょうどそんな時期だったと思う。

いつも、どちらからとも無く一定の距離を取っているような感じ。

それは親父としては寂しくもあり、またしょうがないことだと思っていた。

だから驚いた。

突然、「旭日か夕日が見たいから連れてって」なんて言われた事に。

今までに積もった距離を、一気に縮められるとは思わないけど、

これから思春期に向かって、

親よりも兄弟よりも大事な人が出来るであろう彼女の人生に、

少しでも俺って存在を残せる最後のチャンスだと思った。

だから、

勝手に失恋したんだろうと思って、

少しでも心が癒えればと思って、

ちょっとでも俺がそれに役立てばと思って、

バカ親父全開で、

俺の知る限り、最高にキレイな旭日と夕日を一緒に見に行こうと思った。

しかも二人っきりで。

娘は高校1年生。

多感な時期だ。

陸上部で短距離の選手。

俺より遥かに脚が速い。

彼氏、現在は無し（らしい）。

俺と一緒にいたことを恥ずかしいなんて思われたくない。

性格はオトコっぽいけど、意外に繊細。

さぁ俺、

この貴重な1日をどう過ごそうか。