なぜ釣りをするのか?
『そこに魚がいるからだ(大村巌)』
こんにちは。
[お魚メモ]
【真鯛】
スズキ目スズキ亜目タイ科に分類。
全長120cmに達する大型魚だが、食用として多く流通するのは30〜70cm程度。
体は側扁した楕円形で、胸鰭は細長く、全長の半分近くに達する。背鰭は前に棘条12、後に軟条10からなる。
体色は紫褐色を帯びた光沢のある淡紅色で、青い小斑点が散在する。
成魚は水深30〜200mの岩礁や砂底付近に生息し、群れを作らず単独で行動する。
肉食性で小魚、甲殻類、頭足類、貝類など小動物を幅広く捕食する。頑丈な顎と歯で、エビやカニの硬い殻も噛み砕いて食べてしまう。
北海道以南から南シナ海北部までの北西太平洋に分布。
日本では“メデタイ”との語呂から、慶祝事や神道の祭においてかかせない高級食材とされてきた。
身は歯ごたえのある白身。刺身、煮付け、焼き魚、鍋料理、鯛めしなど。(Wikipedia抜粋)
毎年恒例となっている釣りがあります。
今年でもう5、6回目になりましょうか…。
幼なじみの昇一。
彼もまた釣りが好きで周年仕事の合間に海に出向いて竿を出している。
私が小学生の時に声問川に幻の魚“イトウ”を釣りに行った時も彼がいた。
彼はアウドア派で、どちらかというとプラモデルを作ってる方が好きなインドア派だった私に外での遊びを教えてくれた。
三浦半島東側にある久里浜港に着いたのは、午前5:50。
辺りは暗く、それでも船へ乗る釣り人達が、出船の準備をしながら集まっていた。
1年振りにあった昇一は、いつもとなんら変わらない。
まるでしょっちゅう会っているかのようである。
未経験の私に初めて“沖釣り”を教えてくれたのは、彼である。
それ以来私は、“真鯛釣り”に魅了されて行った。
初めて2人で行った時、あれこれ面倒をかけた。
海も時化気味で、慣れている彼でも船酔いしたぐらいなのに、キーパーの取付けから仕掛けの付け方、餌の付け方、コマセカゴの調節、仕掛けの降ろし方から取り込み方まで、手取り足取り世話をしてくれた。
あれから数年、今では私も慣れて、彼に面倒掛ける事も少なくなっていた。
乗船手続きをして、6時過ぎには、船に道具を積み込み準備をする。
今回は左舷真ん中に私、隣のトモ側に彼。
船釣りでは場所(釣り座)も大事である。
潮の向きや風向きの関係で、釣果に影響する。
前日には気象データを必ずチェックする。
この日は、西北西の風5m、気温5度から13度。
波の高さ0.5m。満潮6時12分。
丁度下げ潮の時に出船となる。
今日は船酔いの心配はない。凪だ。
東から昇る朝日に向かい、白い航跡を残し船は沖の釣り場へと進む。
今日1日の期待にワクワクするこの瞬間も好きである。
『いい天気で良かったなぁ〜。』
『ああ、最高だあ。』
朝日と心地よい潮風を浴びながら、そんなやり取りを昇一としながら、ポイントに到着。
雪化粧をした富士山も遠くに見える。(富士山と鯛・・・かなりメデタイ)
『どうぞ〜。57mくらいです。ハリス分で…。』
船頭のアナウンスが入った。
コマセを入れ、針に餌を付け、海中に入れる。
道糸がするすると出てリールの音が心地よい。
数分後、船から一斉に降ろした、釣り客8名のコマセに魚が反応し、私の竿が曲がる。
巻き上げると“サバ”であった。
この場所では、毎年40cmを越す丸々とした大きなサバが掛かる。
マサバも釣れる。
脂があって美味しいので、エラを切ってクーラーボックスへキープした。
しかし、ここからが苦難の始まりであった。
アマダイ釣り同様、コマセを使う真鯛釣りでは、サバに邪魔をされ、なかなか本命が釣れない。
サバの攻撃に耐え、手返しを続けていた8時30分頃、ググっと当たりが来た。
『またサバか…』
サバがあまりにも多く掛かるので、真鯛の当たりとの区別が麻痺していた。
『いやー、わからんよ。大事に行け。』
昇一からアドバイスを受ける。
海面付近になるとサバは“走る”
でも走らない。
真鯛なら赤色の魚影が見えるのだが、見えて来たのは白い……。
『白いよ…。やっぱりサバだわ…。』
海面に出ると、赤色の魚体が浮かんだ。
昇一が慌ててタモを入れてくれた。
『やったな!』と、喜んでくれた。
先ずは本命を釣り上げ、一安心。
白く見えていたのは、真鯛の腹の部分。
キラキラした魚体は“海の女王”にふさわしい。
目標の60cmには半分も満たない大きさだが、小さくても“鯛”である。
再び、仕掛けを上げたり降ろしたりの作業。
時々船頭が、『一枚上がりました〜』と、アナウンスを入れ煽る。
我々は、相変わらずサバ祭り。
サバは、走ったり暴れるので、隣や反対舷のお客さんと“おまつり”が多発したり、仕掛けがよれてすぐにダメにする。
あまりに釣れ過ぎるので、もうクーラーボックスにはキープはしない。
足元にある魚を活かしておく為のバケツ型の生け簀にどんどん入れて行く。
それでも入り切らない。
まるで、私の水槽みたいになった。
ほとんどサバだが…。
たまに可愛いアジが掛かって喜んでいた9時過ぎ。
またもやググっと竿先が下へ曲がる。
『またサバだよなぁ〜…』
この時点で2人で40匹近くサバを釣り上げていた。
手巻きで50mを上げる。
途中、ぐぐっと下へ引く。
赤い…。
真鯛だ!
船べりに手繰り寄せ小さいので、そのままひょいと船に上げた。
2枚目である。
嬉しいが、隣の昇一にも掛かってくれないと喜び合えない。
またしばらく“サバ漁”が続く。
日も高くなり、正午近く、置き竿にしていた彼の竿が、“クンクンッ”と曲がった。
手巻きリール派の彼が巻き上げる。
『風でぴらぴらしてるよ〜…』
手の平サイズの赤い小さな真鯛が、海面を手繰り寄せられながら、彼の元へやって来る。
『海に還そうかな…。』
彼が言った。
『いやいや、取り敢えず活かしておいて下さい。』
と、船頭が言う。
『鯛は鯛だよ。』
私の言葉は慰めにはならないが、しかし真鯛を釣ったという事実は残る。
釣り人は、より大きい魚が釣りたいものだ。
正午過ぎ、ピタリと静かになる。
いわゆる“潮止まり”である。
潮が動かなければ魚の活性は下がる。
そのまま14時30分、沖揚がりとなった。
2人でサバ60匹近く釣った7時間は、腰と背中に疲労感が残る結果となった。
帰りしなに、彼の家で休憩させてもらった。
奥さんと来年中学生になる息子さんがいた。
息子さんは、体格も大きく、昇一の小学生だった時とそっくりだ。
当時の記憶が蘇る。
彼自慢の塩ラーメンを今年も頂き、体が温まった。
このラーメン、かなりの味。
全て海鮮系からの出汁だが、美味い。
素材は全て稚内をはじめとする道産。
稚内にいらっしゃる彼の母親もお薦めの一品。
将来一緒にラーメン屋をやろうと話してるくらいである。
いつも私をもてなしてくれる、昇一の家族。
幼い頃から稚内の海や山で暗くなるまで一緒に遊んだ友達が、40過ぎたおっさんになっても、お互いに笑いながらあの頃のように釣り出来るのは、いいもんだ。
『また来年やろう。』
そう約束して、家路に着いた。
“目標、真鯛60cm”は成らなかったが、私にとってとても有意義な時間となった。