お勧め小説2点
2年前の記事を転載。お勧め小説の紹介です。
「海賊と呼ばれた男」を読了。期待を遥かに超えて素晴らしかった。
出光興産の出光佐三をモデルとした小説ではあるが、ノンフィクションと言って良いだろう。これを読むまで私は日章丸事件も知らなかったし、石油をめぐる日本とイラン、イギリスの関係も知らなかった。
ネタバレになるから詳しくは書けないが、未読の方には強くお勧めしたい。
従業員を信用しているからこそ、誰も首にすることもなく、タイムカードもなく、組合もなく、定年もない。戦後の苦しい時代には私財を擲って、「もし国岡商店がつぶれるようなことになったら、ぼくは店員たちとともに乞食をする」と断言する。
「でも何千人も社員がいたら、出来の悪いのもいるだろう」と言われ、「社員は家族である。何人も家族がいたら、少しは出来の悪いものもいる。だからといって、君は家族を切り捨てるのか?」
意外だったのは、当時の銀行と保険業界の姿勢である。日本の将来のために、アメリカやイギリスに睨まれることをものともせず、国岡商店に高額を貸し、リスクの高い保険を受け付ける。
当時から「護送船団方式」は存在していたようだが、それに反発する勢力も確実に存在したのだ。
ちなみに「題名のない音楽会」は出光興産がスポンサーとなっていたが、出光佐三の「芸術に中断はない」という考えにより、番組途中でCMが入ることはなかったそうだ。
山崎豊子の「不毛地帯」を彷彿とさせる内容でもあり、あれほどの複雑玄妙さはないが、むしろ快刀乱麻を断つ明快さが読んでいて心地よく、読後感はすがすがしい。「永遠のゼロ」からさらに小説家として成長した作者入魂の作品である。
もう一冊紹介したい。ジェフリー・アーチャーの「誇りと復讐」である。ジェフリー・アーチャーと言えば「百万ドルを取り返せ!」が何と言っても最高級のエンターテインメントとして面白く、読書好きの友人たちに良く勧めていた。もちろん「ケインとアベル」も大傑作である。
この「誇りと復讐」は、一言でいうなら、法廷サスペンスとしての「現代版・モンテクリスト伯」である。息もつかせぬストーリー展開で、読者は一気読みを余儀なくされることだろう。
この極上のワインのようなひとときをぜひ。
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