技術の進化とは
多くのスポーツにおいて、記録は常に進化している。100mスプリントやマラソンは数字が出るので分かりやすい例だが、野球やサッカーなどの技術も、昔と今とでは格段の差があるであろう。
私が高校生の頃は、150kmのストレートが投げられたら、もう豪速球投手だった。
野球の金田正一などは、「オレの現役時代は180km出せた」とか言ってるけど誰も本気にはしていないし、柔道の木村がベンチプレス250kg挙げたとかというのも、かなり誇張されているはずだ。
しかし芸術の世界では、昔の作品を今の芸術家が超えているとはとても言えないし、小説や詩などでもそうである。
でも技術的なものは進歩しているはずで、チャイコフスキーがピアノコンツェルトを作曲したとき、「誰もこんな難しい曲は弾けない」と当時の有名ピアニストに断られたというエピソードがあるが、今ではそのへんの音大生だって弾くことができるようになっている。
だからピアノの鍵盤を弾くメカニカルな技術は進歩しているはずなのだが、今でも誰も弾けない難曲があって、その代表がリストの「ラ・カンパネラ」だ。
リストがこれを作曲したとき、誰も他に弾くことはできなかった。そのため、どんどん易しくしていって、5回目に易しくしたのが、現在普通に弾かれている「ラ・カンパネラ」である。
https://www.youtube.com/watch?v=XCPkAq7nw6c
↑の動画で弾いているピアニストも、世界レベルで言ってもかなりの技量であって、同じように弾ける人はそうはいない。
で、これが二回目のバージョンだ。誰も弾けないので、コンピュータで再現している。
https://www.youtube.com/watch?v=hRv4hqXejEM
このグロテスクなまでの難曲を、リストは弾けたわけだ。
こういう例があると、本当の極限的な人間の才能となると、必ずしも進化しているとは限らず、もしかしたら昔は100mを9秒で走る原始人がいたのかも・・なんて思いを馳せてしまう。