BFRトレーニングは特に遅筋繊維の肥大に有効である
血流を制限するBFRトレーニングにおいては、酸素の利用が妨げられるため速筋繊維が主に使われます。しかし多くのボディビルダーは速筋繊維を主に使うようなトレーニングを行っている(高重量トレーニング)のに、実は遅筋繊維がかなり発達しているということが知られています。
これはトレーニングの量が多いこととともに、短めのインターバルをおいてセットを繰り返すことによりミトコンドリアや毛細血管の発達が促され、さらに疲労物質の蓄積や筋細胞内環境のダイナミックな変化が起こることにより、トレーニングにおける物理的刺激で速筋が発達するのに加え、化学的刺激が加わって遅筋繊維も発達するということで了解されています。
これはハイレベルなアスリートの場合でも同様なのでしょうか。17名のナショナルレベルのパワーリフターを対象に、フロントスクワットでBFRを行う群と行わない群とに分け、6週間に渡って比較した研究が行われました。(※1)
BFR群は1週目と3週目に30%1RMで5回のBFRトレーニングを行い、これはトータル4セットで1セットめと4セットめに限界の回数まで行うという方法でした。
非BFR群は1RMの60~85%で6~7セットを行うというプログラムでした。各セットにおけるレップスは1~6回で、追い込んではいません。
その結果、非BFR群はほとんど筋サイズが変わらず、中にはサイズが落ちた筋もあります。これはナショナルレベルのパワーリフターがトレーニング強度を落として6週間経過すると、そうなるということでしょう。
しかしBFR群はすべて筋サイズが増加しており、特に外側広筋はType 1繊維が11%の増加、Type 2繊維も4%近い増加をしています。また筋核の数も17%増加しており、その後におけるトレーニングでの伸びを期待させます。
ナショナルレベルのパワーリフターにおいて、筋肥大がこれだけの短期間に置いて起こったということは刮目されるべき結果だと言えるでしょう。
なおトレーニング効果はBFRトレーニングを行ってすぐではなく、しばらくの間を置いてから顕れるようです。BFRトレーニングにより衛星細胞や筋核の増加が起こりましたが、それはトレーニング終了10日後にもっとも大きく起こり、筋力のピークは20日後に最大となったという報告があります。(※2)
アスリートを指導する場合は試合の2週間ほど前に最後のBFRトレーニングを行い、それから試合までの間は技術練習を主に行ってウェイトトレーニングは控えるようにすることで、試合時に最大の効果を発揮できると思われます。
※1:
Type 1 Muscle Fiber Hypertrophy after Blood Flow-restricted Training in Powerlifters.
Med Sci Sports Exerc. 2018 Sep 4. doi: 10.1249/MSS.0000000000001775.
※2:
Delayed myonuclear addition, myofiber hypertrophy and increases in strength with high-frequency low-load blood flow restricted training to volitional failure.
J Appl Physiol (1985). 2018 Dec 13. doi: 10.1152/japplphysiol.00397.2018