陸前高田→一ノ関
気仙沼の駅からバスの出る一ノ関まで電車で行く予定。
ここでお別れになるKさんに心から感謝の意を、
言葉で、笑顔で、気持ちで、
持ってる表現全てを使ったけど、それでも足りなかった。
そして、Kさんは笑顔の僕を見つめてこう言った。
は?俺も一ノ関まで行くよ、
って。
えっ、それは申し訳ないから…
いや、その代わりちょっと付き合ってくれ!
あ、バスに間に合えば大丈夫ですから、どこにでもお付き合いします。
僕はKさんの車に乗り込み、相変わらず何処に行くのか分からず全てを委ねる。
最初に行ったのは、Kさんと同じ牡蠣の養殖をする仲間のところだった。
この人の家はおじいさんと一緒に目の前にあった駅ごと津波にのまれちゃったよ。
Kさんはサラリと言ったけど、ただの空き地かと思っていたら踏切や駅舎の後があって、その奥には家の土台。
もうすぐ一年と言うのに、爪あとは残ったままだった。
そのおじさんは、Kさんに僕が誰かも聞こうとせずに生のワカメをビニール袋一杯に詰め込んで、
一言、持ってけとお土産をくれた。
僕らはそこを後にして、また別の場所を数ヵ所訪ねた。
Kさんは、被災した仲間たちを心配して事あるごとに訪ね歩いているようだ。
いつの間にか、
俺のツレ、って言って貰える事が嬉しかった。
幾つかの愛情一杯の寄り道をした後、
最終目的地の一ノ関に着いたのは、まだ夕方だった。