ショパン バラード1番
ショパンの最高傑作はなにか?
そう訊かれたら、「舟歌」と私だったら答える。「そこでは神々も気楽に身体を伸ばす」とニーチェも言っていた。ただし演奏は夭折の天才、ディヌ・リパッティのものでなくてはならぬ。
ショパンで一番良く聴く曲はなにか? と訊かれたら、
バラード1番
と答えるだろう。 あまりクラシックに馴染みのない方も、ぜひこの曲は聴いて欲しい。
「ピアノの森」という漫画で、この曲が描写されていた。
「時は中世、リトアニアが十字軍に敗れた戦いで一人の少年が連れ去られ、敵の司令官に息子のように育てられるが、後に逃げ出し、青年になり、祖国リトアニア独立のために立ち上がる。
彼は十字軍の伝説の英雄『コンラード・ヴァーレンロッド』を名のり、再び十字軍に入り込み、その司令官にまで上りつめ、そして―わざと誤った指令を出して十字軍を崩壊に導き、リトアニアに勝利をもたらすのだ。
しかし、十字軍を裏切ったコンラード・ヴァーレンロッドは、自ら命を絶つのだった」
ここで雨宮君のお父さんが指摘する。
「その話は、十字軍に処刑されるんじゃなかったか?」
雨宮君は答える。
「違うよ、父さん。コンラード・ヴァーレンロッドは自殺するんだ。こっちではカトリックで自殺は悪だからはっきりと書いていないけど、そう解釈するのが正しいんだ。
処刑されるのと自殺するのとでは、情景も感情もキャラクターも全然違うよ!」
そして雨宮君は、
「だって、僕が彼だったら、きっと自ら命を絶つことを、選ぶと思うから」
とバラードを弾きあげる。
ツィメルマンも良い演奏だが、この曲はやはりホロヴィッツに止めを刺す。
自ら命を絶つ、そんな音楽が、次の動画の8分40秒付近で聴くことができるかもしれない。
https://www.youtube.com/watch?v=XhnRIuGZ_dc