今も健在なリクルートイズム
ずっと暑い日が続いていたので、ブログの始まりはつい気候のことになってしまう。今日は比較的過ごしやすく、神戸の最高気温は31度に届かなかったほど。午後に少し雨も降ったので、さらに気温の上昇が抑えられている。
ただ湿度が高いので、どうにも不快。ソファにすわって仕事に集中していると、じっとり汗ばんでくる。汗ばむのは、明け方に目が覚めてずっと悩んでいた部分をようやく書き始めたので、普段より熱くなっていたせいかもしれないけれどねw
熱くなるといえば、2013年に亡くなるまで人生を熱く生き続けた人の伝記を読んだ。
『江副浩正』馬場マコト、土屋洋 共著という本。
リクルートの創業者である江添浩正さんの生涯を綴った良書。江添さんについてはどうしてもリクルート事件のことが先に立つけれど、この事件に関することだけでなく、彼がどのような人物だったかを知ることができる。この本を読んで、江添さんに対する印象がすっかり変わってしまった。
リクルート事件で会社を去った江添さん。だけど残された会社はその後も成長を止めることなく、現在では日本を代表する大企業になっている。それには理由があった。
江添さんは東京大学在学中に、大学新聞の広告集めのアルバイトを始めた。そうして多くの企業を回るうち、リクルートという会社を立ち上げる。最初はたった数人で始まった組織だった。
その詳細な業績は置いておくが、彼が残したものは他の企業にない社風だった。社員の一人一人に経営者であることを求め、若い才能を育て続けた。今でも35歳の早期定年制度があって、リクルートで鍛えられて卒業した著名人が、新しい会社を起こして日本の経済を牽引している。
それはリクルートイズムというもの。
・透明で中立的な開かれた経営でつねにあること。
・社員持株会をつねに筆頭株主とし「社員皆経営主義」を貫くこと。
・つねに組織の新陳代謝に努め、若いエネルギーに満ちた組織であり続けること。
・新規事業に果敢に取り組み、だれも手がけぬ事業をやる誇りをもち続けること。
・つねに高い目標に挑戦し、その過程で個人と組織のもつ能力の最大化をめざすこと。
・徹底した顧客志向により、得意先の満足を最大化すること。
・個人を尊重し、社内はいっさいの肩書、学歴、年齢、性別から自由であること。
これらを単なるお題目ではなく、実行したことがすごい。それは江添さんが率先してそうしてきたから。だから創業者いなくなっても、リクルートという会社が沈没することはなかった。
リクルート事件についても、報道されていることと随分ちがうことを知った。江添さんは世話になった人たちに恩返しをしたかっただけで、便宜を受けようとはしていなかった。そして違法性がないことを、何度も証券会社に確認している。
そのことを証明するかのように、13年もかかって裁判の判決が出たときも、裁判長の言葉は江添さんの主張を認めたものだった。それなのになぜ執行猶予つきの有罪となったのか?
それは世間の妬みだった。江添さんの感謝の気持ちによって、濡れ手に泡で利益を得た人たちが許せなかったからだろう。今でいう『炎上』と同じで、風評によって会社の社長を辞任したり、大臣を辞任する人が出てしまった。
そのことによって江添さんも心痛により、一時期完全に精神を病んでしまう。裁判所としても世間を騒がせたということに関して、無罪にするわけにはいかなかったのだろう。堀江貴文さんが収監された事件と、まったく同じ性質のものだと感じた。
読んでいて涙をこぼしたところがある。江添さんと実母は、小学生のときに両親が離婚したことで音信不通になっていた。ところが江添さんが亡くなる少し前、彼の著書を読んだ母が息子に会いたいと言った。なんとそのとき母は101歳だった。
その二人の再会のシーンを読んで、涙が止まらなかった。いろいろ問題の多い人だったけれど、リクルートという素晴らしい遺産を残した。本当に偉大な人物だったと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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