終末の迎え方
今年の上半期も今日で終わりです。明日からは7月ですね。そして今日は夏越の祓いです。今年前半の無事を感謝して、後半の無事を祈るための祓いの日です。
ということで最寄駅の阪急六甲にある、六甲八幡神社に行ってきました。神戸に引っ越して6年目の去年、初めて茅の輪くぐりをしました。今日は外出しない予定でしたが、妻が美容院に行くとのこと。それならば、ということで二人でお詣りしてきました。やっぱり気持ちがいいですね。
ブログを書いている夕方には雨が降っていますが、午前中は青空が見える天気でした。気持ち良く参拝できたうえに、この夏初めての蝉の声を聴きました。昨日抜け殻を発見しましたが、やっぱり蝉たちは活動開始をしていたのですね。気持ちよくお祓いして、蝉の初鳴きを聴いて、新たな気持ちで今年の後半を迎えることができます。感謝、感謝ですね。
さて、先ほど読了した本です。
『終末のフール』伊坂幸太郎 著という本です。
構成の素晴らしさにいつも唸らされるのですが、今回も物語の設定に脱帽です。心憎いほどプロットのうまさが生かされた作品です。この自由な発想力は見習うべきことばかりです。
全部で8つの物語が収められています。短編としても読めますが、実は全ての物語がどこかで繋がっています。別の章の登場人物がわき役で登場します。舞台は「ヒルズタウン」という仙台北部の丘を造成して作られた団地です。その団地の住人が織り成す物語です。ところが設定が普通と違うのです……。
8年前に小惑星が地球に衝突することが発表されます。あらゆる手段で人類が生き残るすべが考慮されましたが、残されたのは絶望だけでした。既得権益に群がっていた政治家たちは国民を見捨てて姿を消し、世界中で暴動が起きます。スーパーでは残り少なくなった商品を奪い合い、大勢の人が命を失くします。
衝突のさい起きる洪水から逃げようと、高台に避難する人が殺到し、そこでも殺し合いが起きます。テレビ局は放送する人間がいなくなり、行政は全く機能していません。自殺する人が後を絶たず、世界中が大混乱に陥ります。
ところがそれから5年経過して、小惑星の衝突まで残り3年となったころ。世界はようやく一時的な落ち着きを見せます。逃げおおせないと思った人は自ら命を絶ち、殺し合いもあったせいで人口が減りました。だから食料の備蓄が残り3年は大丈夫だと分かると、とりあえず街に残った人が少しおだやかに暮らせるようになったのです。
でも、決して死を免れるわけではありません。心のどこかで3年後の人類滅亡が現実であることを認識しているのです。そんな終末まで残り3年となった、様々な人々の8つの物語です。
10年前に娘と断絶していた父親。
不妊に悩んでいた若い夫婦に訪れた突然の妊娠。
妹と母親を自殺に追い込んだ人間に復讐しようとする兄弟。
ひたすらキックボクシングに打ち込む青年。
家族を失い、孫、母、姉妹、恋人等の役を演じて複数の他人と関わっていこうとする女優。
自分を置いて自殺した両親を許すため、自分の生きる意味を求める若い女性。
暴漢に妻を殺害され復讐を果たしたのち、自殺しようとする男性。
誰よりも最後に死ぬため、団地の屋上に櫓を作る老齢の男性と、それを見守る息子。
こうした人物が、それぞれ3年後の終末に向き合う姿を描いた物語です。いろいろと考えさせられる、でも心が優しく、そして温かくなる物語です。
不思議なもので、私が「今日を最後の日だと思って生きる」と意識し始めると、こうした小説に出会うものですね。自分のそうした思いを、さらに違った観点から広げてもらえる物語でした。
人類が3年後に滅亡するとしたら、あなたはどのように終末を迎えますか? それは「今」をどうして生きるのか、ということと同じだと思います。
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